レース直前のシンエンペラー陣営。左から坂井騎手、藤田晋オーナー、矢作師（撮影・太田尚樹）

＜凱旋門賞＞◇6日＝仏パリロンシャン◇G1◇芝2400メートル◇3歳上牡・牝◇出走16頭◇1着賞金285万7000ユーロ（約4億5700万円） 【写真】レース後に言葉を交わす坂井騎手と矢作師 　【パリ6日＝太田尚樹】今年も悲願達成はならず…。日本代表シンエンペラー（牡3、矢作）は12着に敗れた。海外G1・8勝の矢作芳人調教師（63）と弟子の坂井瑠星騎手（27）で挑んだが、1920年の創設から欧州調教馬以外に制覇を許していない難攻不落の牙城は崩せなかった。英国のブルーストッキング（牝4、R・ベケット）が勝利した。武豊騎手騎乗のアルリファー（牡4、J・オブライエン）は11着に終わった。 　　　　　◇　　　　◇　　　　◇ 　皇帝戴冠はならなかった。エッフェル塔が見下ろすブローニュの森。「頑張れ」の叫びは、今年も「アレ」の大声援にかき消された。朝から小雨が降り続き、ぬれた芝で日本代表シンエンペラーがもがく。創設から103回、69年の日本馬初挑戦から55年。いまだ欧州調教馬以外に踏破を許していない世界最高峰レースは、またしても日の丸の掲揚を許さなかった。 　好スタートを切り、中団から運んだ。だが、最後の直線で伸びを欠いた。坂井騎手は「いい位置にはつけられました。（馬場は）どの馬も同じなので。自分の中で満足のいく乗り方はしました」と悔しさをこらえて振り返った。 　確かな勝算があった。「今までの日本馬とは違う」。海外G1・8勝を誇る矢作師が送り込んだのは、20年凱旋門賞馬の全弟。2年前に仏ドーヴィルにおいて約3億円で落札した。国内G1未勝利でも、血統と適性を重視した。ラジオで初めて凱旋門賞の実況を聞いたのが72年。現地でキャロルハウスの勝利を見届け、友人の担当厩務員と抱き合ったのが89年。半世紀以上にわたる思いをかなえるつもりだった。弟子の坂井騎手も「もちろん勝ちに来た」と野心を隠さなかった。 　これで終わりじゃない。もともとは藤田オーナーも「“記念受験”のようなイメージ」と来年以降の再挑戦も見据えていた。振り返れば全兄ソットサスも3歳時には3着に敗れたが、翌年に4歳でリベンジを果たした。敗戦を糧にして世界中で頂点を極めてきた「チームYAHAGI」。いつかきっと難攻不落の凱旋門も突破してくれるはずだ。 　◆シンエンペラーを管理する矢作師の話　残念以外の言葉はない。前走よりはるかにいい状態だと思いました。馬場に関しては一切言い訳するつもりはありません。今日の馬場はほぼ想定通りだった。答えが出ない。これだけ調教師をやっても分からないことだらけ。もう倒れそうだよ。