F1メキシコGP予選で角田裕毅がレッドブル首脳からの批判トラブルに巻き込まれた事件の真相とは?
2台がコースアウトしたことで、さらに大量の砂ぼこりが舞い、その直後を走っていたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は、「目の前で何かが起きた」と勘違いし、アクセルを一瞬緩めてしまった。 こうして、ミスをしたペレスだけでなく、セクター1を自己ベストで通過していたフェルスタッペンもセクター2でタイムをロスして自己ベストを更新できず、メルセデスの2台がフロントロウを独占したため、レッドブル陣営は怒りの矛先を角田に向けた。 最も激しく非難したのが、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表だった。イギリスのテレビ局に「ツノダにやられた!」と語り、まるで角田がレッドブル・ホンダ2人のドライバーのアタックを妨害したかのような発言をした。 しかし、この発言に角田が所属するアルファタウリのチーム代表を務めるフランツ・トスト代表が、「ユウキは何も悪いことはしていない。むしろ、私はペレスがなぜコースアウトしたのかがわからない」と反論した。 そもそも、もし角田が本当に妨害していたのなら、チームはレース審議委員会に抗議するだろうし、レース審議委員会もなんらかのペナルティを角田に科すはずだが、メキシコGPの予選で角田にはなんらペナルティが与えられなかっただけでなく、そもそも審議すら行われていなかった。つまり、「ツノダにやられた!」という発言はまったくの濡れ衣だったわけである。 では、なぜホーナー代表は「ツノダにやられた!」と発言したのか。 考えられることは、メキシコGPがペレスの地元だったということだ。今回の一件はペレスがコースアウトしたことが最大の原因だった。もし、ペレスが角田にコースを譲られた後、普通にタイムアタックしていれば、それに続いてアタックしていたフェルスタッペンも難なくタイムアタックを続けていたはずだ。しかし、詰めかけた13万人以上のファンの前で、「ペレスにやられた!」とは、ホーナー代表は言えなかったのではないだろうか。 そこにいたのが角田で、彼が所属するアルファタウリは、レッドブルの姉妹チーム。文句を言いやすい関係だったということも、ホーナー代表が角田を標的にした背景にあったのではないかと推測する。 いずれにしても真意はホーナー代表のみぞ知ることだが、角田に責任がないということは、翌日レッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)がわざわざ角田と面談し、「お前は悪くない。(コース上の状況を的確に伝えなかったアルファタウリの)エンジニアに責任がある」と語ったことで明確になった。 角田は何も悪いことはしていないーーそのことは、声を大にして言っておきたい。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)