【高校サッカー選手権】浦和学院、プリンス勢の西武台を下し37年ぶりの決勝へ
第103回全国高校サッカー選手権埼玉予選は11月10日、NACK5スタジアムで準決勝2試合が行われ、浦和学院と正智深谷が勝って11月17日の決勝(14時5分・埼玉スタジアム)で対戦することになった。浦和学院の決勝進出は37年ぶり2度目で、正智深谷は8年ぶり7度目。両校による決勝対決は初めてだ。 【フォトギャラリー】西武台 vs 浦和学院 令和6年度全国高校サッカーインターハイ(総体)埼玉予選ベスト4の浦和学院は、同予選準優勝で高円宮杯 JFA U-18サッカープリンスリーグ2024 関東2部勢の西武台に1-0で競り勝ち、決勝トーナメントに出場した54校の中では唯一、無失点で決勝に駆け上がった。 浦和学院は両チーム最初の好機を得点に結び付けた。前半7分に1トップの橋本秀太(3年)の突破から右CKを獲得し、CB秋澤聖(3年)が左足で放り込んだ。ボールが蹴られる前、浦和学院の選手はゴールに向かって8人が隊列を形成。その中からニアに飛び込んだ橋本がヘッドで完ぺきに捕らえると、バーに当たったボールがゴールインした。これが決勝点となる。 勝利の立役者のひとりは、「ニアで合わせるのは作戦通りで、秋澤から最高のボールがきました。自分が得点して試合を決めるつもりでしたが、5カ月ぶりのゴールでチームが勝てたのですから、めちゃくちゃうれしい」と声を弾ませた。川上耕平監督も歓喜のあまり、「3年分(の仕事を)やってくれました」と表現を変えて橋本に感謝の思いを伝えた。 これで勢いづいた浦和学院は4分後、橋本のパスから右MF平昭一哉(2年)が決定打を放ったが、右に外れて追加点は奪えなかった。27分には左MF坂間真翔(3年)が左から運び、平昭とパス交換して抜け出したものの、GKに一歩早く捕球されて好機を逃した。 9得点・無失点で準決勝に勝ち上がった西武台だが、相手のコンパクトな陣形と3バックのタイトな守りに手を焼き、精度の高いパスをなかなか配給できなかった。 それでも半ば過ぎからリズムが生まれ、前半20分に竹内奏海が緑川梗雅(ともに3年)の右クロスから強シュート。強力2トップで絶好機をつくったが、秋澤のブロックに遭って同点機を逃す。28分の右MF藤木浩人(3年)の決定打も、素早く体を預けてきたCB御武内龍吾(3年)に防御されてしまう。 今大会、右SB鈴木煌平(2年)のロングスローは対戦相手を悩ませてきた。35分に左から遠投。秋澤のクリアを拾った左MF鈴木洸晴(3年)が近距離から狙ったが、これもわずかに左に外れ、39分の鈴木洸の決定的な一撃もまた、御武内のブロックに弾き飛ばされる。 川上監督は「すごくいい前半だった」と振り返った。 後半は西武台がボールを握る時間が長く、やや優勢に進めたものの、それほど多くのビッグチャンスがあったわけではない。 好機は途中出場のFW太田和希(2年)が、18分に藤木の右クロスを合わせたシュートとアディショナルタイムに放った2連発だ。 4分の追加タイムが3分経過した。左SB久保涼輔(3年)の蹴った左CKからCB高倉大翔(2年)がヘディングシュート。バーに当たったこぼれ球を鈴木洸が打つと、浦和学院のクリアボールが跳ね返ってゴールを割りそうになる。最後はDF長岡璃空(2年)が大きく蹴り出して事なきを得た。 タイムアップの瞬間、赤色のユニホームは抱き合って喜び、黄色いユニホームはピッチに倒れ込んだ。 川上監督は満面に笑みを浮かべながら「ロングボールにしっかり競ってこぼれ球を拾えていた。特別なことはせず、いつも通りに戦ったが、3バックは大会を通じて成長してくれた」と無失点に封じた守備陣を褒めた。 その堅陣のひとりである御武内の体は、ラグビー選手のような筋肉のかたまりで、ベンチプレスでは100キロを上げるそうだ。「対人には絶対の自信があります。自分と秋澤が相手に強く当たり、上村(龍生・3年)がカバーに回る役割で、3人で常に声を掛け合って1対1で負けない守備を続けました」と胸を張った。胸元は丸太のようだ。 GK岡本悠汰(3年)も「あの3バックはカバーリングの意識が高く、3人の距離間が抜群なんです」と絶対の信頼を寄せているそうだ。 37年前の決勝は後半に2失点し、大宮東に0-2で屈した。川上監督は「もうベスト8で満足していますからね。決勝といっても気楽に戦えますよ、欲を出してはいけない。選手は誰も緊張していませんから」と言う。 この泰然自若ぶりが、力以上の力を出している源なのかもしれない。 (写真・文=河野正)