企業献金禁止、石破首相「合意ない」 「平成の改革」で反論 初の予算委、野田氏と対決〔深層探訪〕
石破政権の発足後初めてとなる衆院予算委員会の論戦が5日行われた。「政治とカネ」を巡り、石破茂首相が1994年の「平成の政治改革」で企業・団体献金禁止は合意されていなかったと主張。立憲民主党の野田佳彦代表は重ねて禁止を迫り、対決構図が鮮明となった。 【ひと目でわかる】企業・団体献金を巡る主な政党の立場 ◇「歴史修正」 「政党助成金を導入する代わりに、企業・団体献金は廃止の方向となった事実はない」。首相は野田氏にこう強調し、「認識を統一しないと議論が食い違う」と気色ばんだ。野田氏は「背景を忘れてはいけない。ごまかさないで、忘れないできちんと対応しましょうよ」とたしなめた。 首相が触れたのは、リクルート事件を受けた94年の政治改革関連四法成立の経緯だ。国民1人当たり250円の負担を強いる政党助成制度を創設。一方で企業・団体の政治家個人への献金を禁じ、さらに全面禁止に向けて「5年後の見直し」で合意したが、手付かずとなっている。 当時自民党総裁だった河野洋平元衆院議長は国会の聞き取り(昨年12月公表)に対し、「公費助成が実現したら企業献金は廃止しなきゃ絶対におかしい」と語った。「政治改革」を当時唱えていた首相は、この日の予算委で「公的助成が入ったので企業・団体献金はなくなる意識を持った者は自民にはいなかった」と明言。政府関係者は「露骨な歴史修正だ」と眉をひそめた。 首相の「強弁」の背景には、企業献金存続を求める自民内の圧力がある。山下貴司元法相は予算委の質疑で「野党幹部も昨年まで企業・団体献金を受け取っていた。政治改革特別委員会でいずれ明らかになる」と述べ、野党側をけん制した。 ◇「政権能力」アピール 野田氏が最初に取り上げたのは、混乱する韓国政局など地域情勢だった。日米韓3カ国連携の重要性を指摘。この後、記者団に「(韓国情勢に)自民が触れないので、大事なテーマを冒頭に取り上げた」と首相経験者の余裕をにじませた。 立民は来年夏の参院選での躍進や、その先の政権交代をにらみ、少数与党の石破政権との論戦で「政権担当能力の評価を得たい」(国対幹部)と意気込む。 与党との協調路線を歩む国民民主党への対抗心もにじむ。立民の階猛氏は、保険料負担が生じる「年収130万円の壁」対策で給付措置を主張。「私は首相を後押ししている。協議の場をつくるようお願いしたい」と呼び掛けた。 ◇維新は対峙 日本維新の会は、吉村洋文代表が率いる新体制で臨んだ。岩谷良平幹事長が企業献金の存続を譲らない首相の答弁に、「首相が誰に代わっても変われない党だと確信した」と述べ、政権との「対峙(たいじ)」方針を宣言した。 続いて青柳仁士政調会長は政治資金規正法再改正を巡り、自民案が外交などに関する一部支出の非公開を認めたことを「ブラックボックスをつくろうという話」と断じた。 青柳氏は自民には日本医師会などから多額の献金が流れていると指摘。首相が「頂戴したから利益を計らうことはしない」と反論すると、青柳氏は「ならば『自民は(企業・団体側に)配慮しない。それでもいいならお金を下さい』と言ってほしい」と皮肉った。