【実録 竜戦士たちの10・8】(32)「高木・長嶋・星野」豪華対談の話題はやはり落合博満の巨人入団
1993年12月21日。名古屋市内の中日球団事務所に立ち寄った落合博満は、その足で東京に向かった。東京都内のホテルで巨人の監督・長嶋茂雄、球団代表の保科昭彦と形ばかりの入団交渉。年俸4億円の2年契約で合意。背番号も球団60周年にちなみ60番に内定した。 そのまま臨んだ会見では「それなりの成績を残す自信はある。責任の重さは十分に感じている」と緊張気味に話した落合。同席した長嶋も「中心選手的な役割を担うよう期待している。大きな夢と戦う気力が生まれた」と顔を紅潮させ、期待を口にした。 さらに「長嶋さんにはファンレターを出したこともある」と自らエピソードを披露。「40歳の選手を取ってどうなる、という声が耳に入って来るが、迷惑をかけるために入ってきたのではない。ここまで熱心に誘ってくれた監督のクビを切ったら末代まで笑いものになる。監督を胴上げしたい」。いつも冷静な落合には珍しく、興奮した様子で語った。 突然の落合訪問で一日が始まった中日球団事務所では今中慎二が契約更改交渉に臨んだ。「サインしました。キュウニです」と明かした通り5500万円増の9200万円でサイン。高卒5年目の投手では史上最高額を勝ち取った。 その翌22日には球団では落合、郭源治に続く3人目の1億円プレーヤーが誕生した。 「5年目まで、ずっと400万円以下。高校出の新人より少なかったですからね。よくここまで来たな、と思います」 しみじみとこう話したのは山本昌広。4800万円増の1億円。プロ11年目での大台到達だ。プロ初登板が3年目。プロ初勝利までには5年がかかった。そんな遅咲きの左腕が最多勝、最優秀防御率の2冠に輝き、勝ち取った大幅アップ。苦労もあった分、山本昌の表情も感慨深げだった。 そしてこの日、1月1日にCBCテレビで放送予定の「新春ビッグ放談」の録画どり。対談するのは高木守道と長嶋の両監督。司会は星野仙一という豪華な顔合わせ。やはり話題は巨人入団が決まった落合に。 「今年、ウチが負けたのは打てなかったこと。不動の4番がどうしてもほしい。それに範を示してくれる選手がウチにはいない。彼の持つ実績、キャリアで松井(秀喜)や元木(大介)に範を示してもらいたい」 有力OBなど周囲の反対を押し切ってまで落合獲得に動いた理由を、長嶋は高木と星野に、こう明かした。 =敬称略、金額は推定 (館林誠)
中日スポーツ