カメラから「思い出の新しい形式」を生み出す。イメージングブランドkyu創業者 大川優介インタビュー
kyuの理念を体現する、2つのプロダクト
──では、そのようにしてスタートしたkyuではどのような事業を? kyuでは、新しい記録のあり方を提案しています。具体的なプロダクトとしては、主に次の2つ。 1つ目は、誰もが簡単に思い出を動画で共有できるアプリ 「kyu app」です。招待制のクローズドなアプリで、コンセプトは「誰のものでもない自分たちだけの思い出を残そう」。アプリ内で1日9本、9秒の動画を家族や友人、パートナーたちとだけシェアできます。招待制のため、利用するためにはまずInstagramの非公開アカウントをフォローしていただく必要があるのですが、現在、約6000名のフォロワーがいます。 2つ目は、先日発表させていただいた「kyu camera」です。これは何気ない記録を思い出に変える、kyuの理念を体現したカメラ。
ボタン1つで9秒間の動画を撮影することができ、それをすぐに先ほどのアプリで大切な人だけにシェアすることができます。またハイライトをまとめた動画も瞬時に作成可能。思い出を残すことにこだわった、新しい形のカメラです。 完成までには何度もトライアンドエラーを繰り返し、ようやく形にすることができました。現在、プレオーダーの受付を終えて販売に向けて準備を進めています。
「記録の再発明をする」という言葉に込めた想い
──これまで難しい局面はありましたか? やはりkyu cameraの開発でしょうか。 「いま世の中にあるどの基盤を使うか? どこで製造するのか?」など、開発は想像以上に複雑です。幸いにも、カメラメーカーのエンジニアやマーケティングの方に支援いただけて、実現することができましたが、いままでの活動のすべてをかけたチャレンジでした。 また、開発に注力している間は、2年ほど製品が出せていない状態だったので、ストレスや葛藤もありました。ですが、この経験で自分の弱さも理解しました。自分は「短期思考」なんだ、と。 いままで、常につくり続け、回転させ続けるマーケティングやコンテンツコミュニケーションをしてきたので、スピード感のあるものを求めたくなってしまう。本当にいいものは時間をかけないとつくれないと理解していますが、SNSの時間感覚が染みついていて、僕の中の「何かを生み出すサイクル」がどんどん短くなっているのだと思います。 この開発に費やした2年間で、「自分たちが本当にやるべきことには、時間を注ぎ続けなければならない」と学びました。 ──その「本当にやるべきこと」について聞かせてください。kyuの事業で達成したいことや、目指しているゴールは? 「記録の再発明をする」ということが目標なので、新しい記録のあり方を生み出し、それを世界中に広げていきたいです。 日本のカメラは、世界的にもっとも信頼されている製品の1つだと僕は思います。ですが、アメリカの「GoPro」や中国の「DJI」のような、まったく新しい形で記録を残せる製品が、まだ日本から生まれていないという課題があります。 僕たちのkyu cameraが「思い出を美しく、鮮明に残すための新たな動画ツール」として、世界中に広がっていく。そんな未来を僕は思い描いています。 人生の思い出を記録する度に、もっといい体験がしたくなる。そのような良いライフサイクルを生み出すのが理想形ですね。 ──そんな大川さんの熱意は、どこから湧いて来るのでしょうか? まず「いま、この瞬間を大切にしたい」という気持ちでしょうか。 人間は脆く、事故や災害が起これば呆気なく、この世界からいなくなってしまいます。だから「いま、この一瞬はかけがえのないもので、自分は恵まれている環境にいる」と常に感じるようにしているんです。時間を大切に感じられないと、美しい記憶を残そうという発想には至りません。kyuのビジョンを実現するためにも、時間に対する意識は大事にしています。 もう1つ、自分の根本には「良い人間になりたい」「価値のある人材になりたい」という成長欲があります。自分の中に良い人間の定義があって、それを達成するために努力したいという気持ちが、熱意の源泉になっています。