【独自】弁護士・四宮隆史(株式会社 嵐 社長)インタビュー 芸能人の「プライバシー」について いま話しておきたいこと
―池田― 一方で、「文句があるんだったら訴えればいいじゃないか」とか、「裁判すればいいじゃないか」という声もあると思うが、それが難しい理由は? ―四宮― 一つは、芸能人の場合は やはり訴える場合には自分…個人で訴えなければいけないので、芸名で活動している人でも本名で裁判をしなければいけないし、裁判をして、例えばそれが…(法廷で公開されているため)傍聴はできますよね。 裁判の傍聴はできるので、人の目にさらされることもあるし、今でも日本の場合「裁判沙汰」っていう言葉があって、裁判をすることに「ネガティブな思い」を持っている人もいますから、そこは芸能人は、なかなか一歩踏み出しにくいところなのかなと…「弁護士費用」というのも、もちろんあるとは思います、はい。 ―池田― 仮に「プライバシー侵害」が裁判で認定されたとして、実際、その報道をしたメディアが たくさん売れたり、PVが稼げたり という「お金を稼ぐ」っていう部分と (侵害された側が受け取る)賠償額というのは、つり合っているのでしょうか? ―四宮― いや、そこが釣り合わないんですよね…。やはりプライバシー権の侵害、プライバシーを含めて名誉権もそうですが、人権の侵害っていうのは、数値化できない損害部分なので・・・ アメリカは「懲罰的な損害賠償」があって、あまりにも悪質だから、これは1億…とか、そういった(巨額の)損害賠償を認める制度がありますけど、日本の場合は基本的にはそういう制度がないので、大体、人格権の侵害に関しても損害っていうのは「相場」ができてしまっている。 なので、例えばメディア、週刊誌とかメディアで言うと、その売り上げが どれだけ大きかったとしても、その売り上げに応じて損害が認められる、ということではないんですね… ―池田― 日本の現状は、歯がゆい部分がある? ―四宮― うーんそうですね…その行為の悪質性、記事の内容であるとか、やりかたとか、報道の仕方… その悪質性によって、賠償額が変わってくれば「一定の抑止力」にはなるんじゃないかなという風には思いますよね… 悪質であろうとそうでなかろうと、大体これぐらいの相場で損害賠償が認められる、というふうになるのは、少し時代とともに変わっていかなきゃいけないのではないかな、とは思いますね。 ―池田― 以前、「プライバシー侵害」として認定された事例として(アイドルなどの)「追っかけ本」、住所まで載っているような本っていうのは、以前はあったように記憶しているんですが、今はなくなったのでしょうか? ―四宮― ないと思います。そういう本が出版されることはないと思います。興味深いなと思うところは、先ほど「SNS文化」と言いましたけども、SNSに芸能人のプライバシーをさらすことを「良し」としている人たちばかりがいるわけではなくて、それを「止めよう」とする、ファンであったりとか、良心的な人がいらっしゃる。 住所をさらすとか、電話番号をさらすっていうことは、一部あるにはあるとは思いますが、そこはプラットフォームも含めてですが、ここは駄目でしょ、明らかに駄目でしょ、というところは(投稿が)削除されたり、(アカウントが)BANされたり、っていうような傾向にはある。 そこは「痛し痒し」というか、(プライバシー)侵害が広がるツールでもある一方で、侵害をとどめる効果もある。という感じ…