【独自】弁護士・四宮隆史(株式会社 嵐 社長)インタビュー 芸能人の「プライバシー」について いま話しておきたいこと
―四宮― それが今でも…その基準が通用して、ただその「基準」が悪いわけではないんですが、ただその基準に事案の当てはめをしていく時に、昔と今とではやっぱり事情が変わってくるので、その当てはめの部分で、今の時代に合った判断をしていくべきだと思いますし、そういうそういった裁判例が積み重なっていけば、少し変わってくるのかな…というふうには思いますが。 ただ、プライバシー権侵害の裁判って (裁判を)起こす方からすると ものすごく勇気のいることなんで、プライバシー権侵害の裁判が数多く行われれば良いと思えないところもあって、難しいところではあります。 なので、表現活動だったり、メディア・媒体、色んな事が変わってきて、アナログとデジタルというだけでも「全く違う」と思うので 「新しい基準」を設けるべき時に来たのかな…という風にも思います。 ―池田― 言いたいことがあるのに、我慢を強いられる…それは日本の芸能人の文化なのでしょうか? ―四宮― そうですね、我慢を強いられてきたのかもしれないですね。芸能人とかタレント、アスリートも 自らの意見を発信するっていうのが、ある種 躊躇する世の中だったとは思います。 芸能人・アスリートが自分の意見を発信すると「いかがなものか」っていう風潮があったかもしれないですが、最近のSNS、これも「良い側面」だと思いますけど、そういうツールを使って 自らの意見を発信することができる環境にはなってきたかなと。 ただ「炎上」という言葉があるように 芸能人の方は、言葉尻であったり、ちょっとした内容で炎上してしまって、その炎上を皆さん、ある種「エンタメ」として楽しんでしまうところがあるので、ツールはあるけれども、発信するのは勇気がいる…という状況は変わらないかなとは思います。 ちょっとプライバシーとは離れますけど、誹謗中傷ということでいうと、コロナの時期も含めてですが、著名な方々が、心を病んで自死を選ぶ…ということもありましたから、そこを規制しようと思っても なかなか難しいところではあるんですが、それぞれの方々の「節度を守ってもらう事」を期待する以外に 正直なかなかないんですよね… 一つ一つ、そういう投稿を、訴えを起こして潰していく…みたいなことをしても、もう、次から次に出てきますから。だから国なのか 全体的に制度作り、それから法律かどうかはわかりませんけれども、業界団体との話し合い…ということによって「一定のルール」を作っていくべきだとは思います。 結構売れているタレントさんや俳優さんから、そういう制度作りができないのか…という相談を受けたことも何度かあります。 ―池田― テレビ番組に出演していた方が亡くなったことを受けて、「侮辱罪」については ある程度、厳罰化されたが 「プライバシー権」というのは、もう何も基本的には変わってない? ―四宮― そうですね…プライバシー侵害で「刑事罰」ということはないので、ただプライバシー権の侵害に当たる場合には、大体は何か(別のもの)とセットだったりする。侮辱的な表現であったり、名誉毀損的な表現も加わっていることの方が多かったりもするので、そういった、今ある制度の中で、取り締まっていくっていうことはできると思いますね。 ―池田― これまでの話をずっと伺っていると、それで裁判で訴えて勝つことを(第一に)望んでるわけではないわけですよね? ―四宮― そうですね。訴えを起こすのも、なかなか勇気のいることですし、(芸能人が)自分の裁判を起こすにも、自分の本名で、自分の名前で裁判を起こさなければいけないし、(SNSなどの)投稿を削除する、「削除要請」をするときにも、本人確認が求められるので、弁護士とか、芸能事務所が代理をしてそれを行う事が なかなか難しい。 「本当にあなたは、その方の代理人なんですか? その方の本人確認をさせてください」ということになるので、非常に…そこまでやらなきゃいけない事態になる前に 止めてほしい。というのが切実な想いだとは思います。