1館から全国上映へ。『侍タイムスリッパー』監督とキャストが語る、高みを目指した撮影現場
役づくりはどのように行なったのか。現代の時代劇スター、錦京太郎
―俳優のみなさんは演じるキャラクターをどのように追求されたんですか? 田村:錦京太郎を演じるうえで監督には「二枚目の大御所俳優の空気を出してくれ」と言われたんですが、いままでそんな役をしたことがなかったので、大御所の所作をいろいろ研究していきました。 たとえば刀を付き人に渡すときに人の顔を見なかったり、顔の前に手を構えたらタバコが出てきたり。それを東映の俳優部の方々に細かく教えていただいたのはいまでも忘れないですね。 安田:心配無用ノ介は撮ってて面白かったですね。自分で言い回しや決め動作を考案してノリノリでやってくれてたから、みんなで「田村さん、活き活きしてんな」って笑ってました(笑)。 じつは田村さんはどの役をやってもらうか最初決まってなくて、クランクインしてだいぶ経ってから「田村さんなら正統派の2枚目もいけるな」と思って心配無用ノ介を託したんです。見事にハマったので、田村さんに任せてよかったです。 冨家:めちゃくちゃ印象に残るキャラクターですもんね。 沙倉:そういえば田村さんだけ台本持っていなかったですよね。途中参加やから(笑)。 田村:そう、僕だけ台本もらってない。行ったらもらえるもんかと思ったら誰もくれへんし。最初はスマホでデータを見ながらやってたんですけど、何日かしてから監督に「いつになったら台本くれるんですか」って聞いたんです。そしたらもう在庫がないって言われて……。 安田:あはは、僕そんなことやってました? でもたしか途中で誰かが使い終わったやつをあげたような……。 田村:もらってませんよ!毎回僕だけデータをプリントアウトしてやってましたから! 一堂:(笑)
物語のキーパーソンとなる風見恭一郎。「記憶をかき集めてつくりあげた」
―冨家さんはどのように役づくりをされたんでしょう? 冨家:時代劇の大スターとして画面に出てきたときに見劣りしたらアウトだなと思ったので、本番前にはいつも身体のなかを空気でパンパンに膨らませてから演じていましたね。京都東映でいろんな時代劇に出させていただいていたときに、松方弘樹さんや北大路欣也さん、里見浩太朗さんなど大物先輩方のオーラを見ていたので、その記憶をかき集めて風見という人物をつくりあげていきました。 安田:キャスティングにすごく悩んだ役だったので、初日に冨家さんを撮ったときに「大スターに見える。冨家さんで間違いなかった」と安心したのを覚えています。でも表現するのが難しかったと思いますよ。大スターという設定だけでなく、佇まいからそう見せる必要があったので。 冨家:そこが一番怖いところでしたね。雰囲気に関してはお芝居で誤魔化せませんから。 ―風貌が完全に大スターでしたよ! 大御所なのに謙虚なところが風格もあって。 安田:冨家さんは江戸時代の元武士である大スターという佇まいになっているんです。一方で錦京太郎(心配無用ノ介)は現代人だからお調子者感が最後まで抜けきらない(笑)。その違いがきちんと生まれていてうまくいったなと思いました。