「媚日企業」とレッテルを貼られて大ピンチの中国最大のミネラルウォーター
「農夫山泉」が受けた打撃
GW期間中、中国最大のミネラルウォーター「農夫山泉」の鐘睒睒(ジョン・シャンシャン)CEOが来日した。2021年から3年連続で「中国首富」(中国の長者番付トップ)に輝いた大富豪だ。 都知事経験者が明かす「都政の病根」と「地方自治の闇」 ところが5月1日に、福岡ナンバーの車に乗る鐘CEOの写真が、中国のネット上に流出するや、すぐさま攻撃対象にされた。「日本詣でに行った」「親日家で祖国に対する愛が足りない」……。3月にも、「農夫山泉」が同様の攻撃を受けたばかりだ。 「農夫山泉」の会社名は「農夫山泉株式有限公司」。1996年9月26日に鐘CEOが設立した同社は、その経営手腕によって、著しい発展を遂げた。 「農夫山泉」は、14億人の中国人が愛飲してきた。しかし今年になって、その流れが変わった。 ペットボトルの包装デザインが靖国神社の社殿の形と似ているとクレームがついたのだ。3月5日に、ハンドルネーム「金蝉視頻」のアカウントが動画を公表し、「茶π」という製品の包装が「親日的だ」と攻撃した。「茶」という字を日本風の書き方にしただけでなく、デザインも靖国神社の社殿の形状に合わせたものだと主張。かつ「π」の記号も、神社の鳥居に見えると難癖をつけた。 当然ながら事実無根なのだが、その動画はたちまち話題を呼び、広く拡散していった。さらに、一部の民族主義者たちが「農夫山泉」の商品に対して、さらなるアラ探しを始めた。「ミネラルウォーターのピンのフタが日章旗と似ている」「ペットボトルの包装に浮世絵が描かれている」……。 世論に敏感な小売業者たちも、この動きに同調していった。「もう『農夫山泉』を売らない」と宣言する小売業者や、「農夫山泉」のミネラルウォーターをトイレに流す映像などが拡散した。愛国主義者を自任する人たちも、製品ボイコットに出た。 かくして「農夫山泉」の株価は大暴落。わずか3日間で300億元(約6300億円)が吹っ飛んだ。 同社は3月7日、「指摘された茶の包装の図柄は中国の建築をモチーフにしたデザインである」と釈明した。これで、コトは収まったかに思われたが、冒頭に書いたように、鐘睒睒CEOの日本視察が、火に油を注ぐ結果となった。