「媚日企業」とレッテルを貼られて大ピンチの中国最大のミネラルウォーター
どうなる対日感情
「鐘睒睒は親日の面目を露わにした。GW期間中にわざわざ日本詣でに行き、本性を現したのだ」 「日本人の祖先を祭りにいったのだろう。鐘睒睒は日本からの移民者だ」…… 同社は5月2日、「デマの流出者を法に基づいて訴える」と警告した。5月20日には、同社及び鐘睒睒CEOに関する20のデマについての弁明文まで公表した。 しかし、民族主義が蔓延している「習近平新時代」の中国のSNS上では、鐘睒睒CEO及び「農夫山泉」に対するいわれなき誹謗中傷が、いまだに削除されていない。 実はこうした現象は、「農夫山泉」に限ったことではない。今年1月、江蘇省の省都・南京の「中央商場」というショッピングモールで、正月の飾り絵に赤い丸と放射状の線が描かれた。だがそれだけで、「日本軍の軍旗をあしらった」と、SNS上で議論が巻き起こったのだ。それによってデパート側は、全面改修に追い込まれた。 鉄道の車窓に貼ってあった赤い警報のマークも「日章旗扱い」された。中国政府が「愛国企業」とお墨付きを与えているはずのファーウェイまでもが、同社のシンボルマークが日本の皇室の菊の紋章をかたどっていると議論された。 このように、今の中国では、3期目の習近平政権の方針によって、民族主義が横行している。特に最近は、これまで尊重してきた日本などの先進国及びその企業に対して、非難が渦巻いている。これは習近平政権の「戦狼外交」(狼のように他国に吠える外交)の影響が大きい。何より習近平主席自身が、筋金入りの民族主義者だ。 2009年、メキシコを訪問した習近平副主席(当時)は、「一部の外国人は衣食足りて、我々(中国)に対して指図している」と述べた。そんな15年も前の談話が、中国ではいまだに「美談」として大宣伝されているのだ。 習近平主席に媚びるかのように、中国の官製マスコミは「米国は敵」とばかりに強く批判。ついでに米国の盟友である日本も排斥する。中国と日本の間には、もともと歴史問題も存在する。 そんなわけで、中国の対日感情は、より悪化している。中国国内でビジネスを展開する日系企業は、これまで以上に気をつけなければならない局面にある。 ともあれ、民族主義は諸刃の剣だ。外国に刃を向けているようで、実は自国企業に害を与えている。その結果、中国経済がさらに失速していく。愚かなことだ。
林 愛華