HiHi Jets猪狩蒼弥、映画初出演で「なんで僕?」から芝居の楽しさをつかむまで【インタビュー】
俳優の奈緒が主演する映画『先生の白い嘘』が7月5日に公開される。今作で映画初単独出演ながら、物語の重要な役柄に抜てきされたのが猪狩蒼弥(HiHi Jets)だ。撮影当時は演技経験もほぼないなかで、模索し続けた猪狩が、合同取材で、「なんで僕?」と不安も抱えながらつかんだもの、今後の俳優としての展望を彼らしい芯のある言葉で語ってくれた。 【写真】鋭い視線にゾワリ…怪演をみせる風間俊介 今作は2013年から17年まで「月刊モーニング・ツー」(講談社)で連載された、鳥飼茜氏の同名漫画(全8巻)を実写化。ひとりの女性が抱える「自らの性に対する矛盾した感情」や、男女間に存在する「性の格差」に向き合う姿を描くことで、人の根底にある醜さと美しさを映し出したヒューマンドラマ。男女の性差に翻弄(ほんろう)され葛藤する主人公の高校教師・原美鈴を奈緒が演じている。 猪狩演じる美鈴の担任するクラスの生徒・新妻祐希(にいづま・ゆうき)は、ある日クラス内で人妻と不倫関係にあるとうわさされてしまう。担任の美鈴は、新妻を呼び出して事情を聞こうとするが、新妻はある衝撃的な性の悩みを打ち明ける。深いトラウマを抱えた高校生を猪狩が繊細に演じ、鮮烈な印象を残している。 ■日常の会話から役柄を取り入れる “演じる”のではなく「新妻くんにならなきゃいけない」 ――今回出演が決まった時の心境、企画や台本を読んだ時の印象を教えてください。 撮影は結構前だったので、その当時は今ほど忙しくなく、映画出演できると聞いて、まずうれしかったです。先に映画の仕事だと聞いて『やった、映画!』だと思ったのは覚えていますね。その後に詳しく話を聞いて『先生の白い嘘』という作品だとうかがい、原作を拝読した時、センシティブな話だし、これを自分が演じるのは大変なことだなとは思いました。 ――お話をいただいた時は、ご自身の演技経験的なものは。 ほぼなかったです。身内で、といいますか誰かしら先輩や仲間がいる作品。主演が基本的に同じ事務所の誰かという作品だったので、そういう意味で言うと、主演が奈緒さん、横に三吉彩花さんがいて、風間(俊介)さんは先輩ではあるけど俳優として第一線で活躍されている方の中に自分1人で入ってくっていうのは初めてだったので、そういう意味で“胸を借りる気持ちで”とか言っていられないな、みたいな。胸を借りる気持ちでやる作品じゃないから(笑)頑張んなくちゃなって。 ――結構プレッシャーは感じていた。 めちゃくちゃ感じましたね。ちょっと自分には荷が重いというか、自分のポテンシャルを超えている作品なんじゃないかなって正直思ってしまった。でも、結局やるわけだから、どうやって皆さんの邪魔をしないじゃないけど、皆さんにどれだけ追いつけるか、皆さんの中にどれだけなじめるか、撮影までたぶん1ヶ月半ぐらいから2ヶ月ぐらいで模索しなきゃなと思いました。 ――今回の作品はかなりセンシティブな描写もあり、シリアスな空気で、ほかの同世代のジュニアの皆さんが出演している作品とはまた違ったジャンルですよね。 それで言うと、メンバーの作間(龍斗)が結構近い感じ。それ以前に自分はバラエティー(担当)だと思っていたから、映画のオファーが来たことの方が僕的には驚きでした。逆に作風がいわゆるキラキラ系ではなく、初めての作品がこういうジャンルだということは僕の中では特別感はありました。そういった作品から(芝居の仕事を)1歩踏み出せるっていうことが、僕はすごくうれしかったです。 ――難しい役どころでありながらも、すごく役に入りこまれていたのですが、役作りや日常生活に取り入れたこととかはありますか。 役作りはまず監督と話し、自分のやり方をぶつけようっていう感じでもなかったから、とにかく本当すがるように、追いつかなきゃと。高校生らしさも考えた方がいいよねと、まず見た目から、前髪を一切切らないとか、ライブ期間中も毛量の調節とかも一切しないでツーブロックを伸ばすとか、結局剃りましたが、ひげもちょっとまばらに入っていた方がいいんじゃないか…みたいなこととか。意識から変えてかなきゃいけないなと思って。確かに新妻くんはたぶん髪を染めないし、そういうところから『演じよう』とも思っちゃダメ。新妻くんにならなきゃいけない。それでようやく僕はたぶん、新妻に近づけるような気がした。『自分が新妻くんを演じるんだ』という気持ちじゃ、たぶん全然追いつけないなって思いました。 ――日常から新妻くんらしさ、を取り入れていたんですね。 撮影期間はしゃべり方もゆっくりしゃべることを結構意識していた気がします。僕は基本的にラップやっているし早口。語気も強いので、そこを穏やかにしなくちゃいけない。自信なさそうにしなきゃいけないので、ゆっくり声のトーンを落として話すことは意識していた気がします。 ――たしかに私たちが普段見てきた猪狩さんのイメージとはかなり離れているかなとも思うんですけど、実際の学生時代とも結構ギャップありますよね。 ありますね。本当に逆ですね。真面目じゃなかったし、勉強は好きだったんですけど、はしゃいじゃうタイプだったから、新妻はすごく特殊だと思うんですけどそういう面でも自分とは違うなとは思いました。 ――新妻とご自身は結構真逆のタイプとのことですが、なぜ自分にオファーが来たのか、考えたりすることはありましたか。 めちゃくちゃ思いましたよ。『なんで僕?』ってマジで思いました。それこそメンバーで言うと、作間の方が見た目もちょっと近いというか…。僕もなんでだろう、というのはすごく気になりましたけど、詳しくは聞かなかったです。聞くことも野暮な気がしてしまって(笑)。 ――実際に作品を拝見すると、猪狩さんが新妻を演じることに納得感があるんですけど、自分自身の中ではモヤっとしたものがあった? でも、結果的に僕にオファーが来たわけで、そこには何か理由があったのだろうから『なんで僕だったのだろう』よりも『猪狩にして良かったな』と思ってもらえる方に時間を割くべきだと考えました。