HiHi Jets猪狩蒼弥、映画初出演で「なんで僕?」から芝居の楽しさをつかむまで【インタビュー】
■風間俊介の計らいに感謝 “馴れ合い”では成立しない本気の芝居「怖さの中に、ものすごい優しさが、きっとあった」
――この作品に出演することについて、メンバーから反響はありましたか。 本当に何にもないですね。逆もしかりというか、あまりメンバーの作品を観たことがない。出演すること自体に対して『おめでとう』みたいなことは一切ないです。誰かが映画決まっても、僕も『おめでとう!』みたいになったことはなくて、後から『面白かったね』とか『あのシーンってどうやって撮っているの?』みたいなやり取りはあります。でもメンバーにも観てもらえたらうれしいです。 ――奈緒さんや風間さん、三吉さんという共演者の方々がいて『胸を借りるつもりで…なんて言っている場合じゃない』とおっしゃってましたが、実際に奈緒さんと共演した感想はいかがでしたか。 奈緒さんは本当に、僕にとって女神のような方。とにかく現場が怖かったんです。僕にとって怖いは“恐怖”というより“不安”だった。この錚々(そうそう)たるメンツで僕なんだ、というのもあるし、トライアンドエラーでいけるものじゃない。絶対に決めに行かなきゃいけない。僕のニュアンス1つで作品の雰囲気が変わってしまう可能性もはらんでいるというプレッシャーももちろんあった。撮影が富山県だったのでホテルに帰っても1人だし、メンバーにも家族にももちろん会わない。コロナ禍でご飯にも行けない。結構過酷な環境だったんです。現場の皆さんもプロフェッショナルだから僕のことをちゃんとイチ俳優部として扱ってくれて、すごくありがたいことなんですけど、だからこそ現場のピリピリ感みたいなのは肌で感じていました。そのなかで奈緒さんは本当にオアシス(笑)。優しいし、作中ではお互いが唯一の味方だったので、お互いに寄り添える関係が裏でも築くことができました。 演技に関して『もっとこうした方がいい』みたいなやりとりがあったわけでもなく、なんの話したかも覚えてないぐらいの当たり障りもない『兄弟いるの?』みたいな話から、お互いを知っていく作業みたいなものを通してすごく安心しましたね。奈緒さんのすごいところは、支度部屋で話している時こそホンワカした雰囲気になるんですが、部屋を出た瞬間に“先生”になるんですよ。さっきまで奈緒さんだった人が先生になって存在している。僕の中で役に入るということは、集中する、周りを遮断して、オンオフをしっかり切り替えることだと感じていたのですが、先生がそこにいたら僕とこうやってしゃべるだろうなみたいな感じの空気をまとっている。普通に支度部屋でした話の続きとかを、ちょっと転換で時間かかる時とかにしても、先生と話している気持ちになる。本当に役に入るってたぶんこういうことなんだなっていうふうに思いました。 ――そんな優しい奈緒さんにひどいことをし、0距離で圧をかけてきた風間さんとの共演はいかがでしたか。 怖くて…本当に怖かった(笑)。一緒のシーンは終盤にまとめて撮ったんですけど。現場にいらっしゃってごあいさつした時も、お互いの役を気遣ってくださって結構ドライな感じで『うん、おはよう。よろしくね』みたいな。 話しかけられる雰囲気じゃない。そんな僕も気軽にいける雰囲気じゃない感じだったので、本当に怖かった。 早藤が先生に、僕に関するひどい電話をかけるシーンがあって。本当なら僕はその電話を聞いてない設定なのですが、風間さんが監督に『この後、先生にかける電話を新妻の前でやっていいですか』と言って、先生にかけるセリフを僕の前で、オンのテンションで1回しゃべってくれたんです。最初は、自分は出ていないシーンだし、なぜそういうことをしているのか全然わからなくて…。周りのスタッフさんは何か察したように『じゃあ、やろう』みたいな感じで、カメラこそ回ってないけど、よーい・スタートも本番のようにやりました。でもそれによって、自分の中で、あくまで風間さんってどこかで思っていたところがあったのが、ひどい内容の電話だから、一気に新妻として早藤に抱いているであろう感情、早藤に対する憎しみを引き出してもらえた。ありがたいなって思ったんです。早藤との撮影が終わるやいなや、ディズニーとか飛行機のマイルの話をじょう舌に話してくれました(笑)。今、考えると、経験の浅い僕に“何もしない”というサポートをしてくれていた。生半可な優しさで『大丈夫だからね、一緒に頑張ろうよ!』みたいな対応をされていたら、逆に甘えちゃっていただろうし、新妻と早藤の関係には絶対になれなかった気がします。そこも風間さんが計算されていたのだと。怖さの中に、ものすごい優しさが、きっとあった。今はものすごく感謝しています。 ――今まで怖かったのに急にディズニーの話をされたんですね(笑)。 それがまたすごいのですが、一気に話しかけていい雰囲気になるんですよね。それまではもう絶対話しかけられないんですが服の着方、脱ぎ方とかも全然違う。すごく偉大な先輩だなと改めて思いました。