HiHi Jets猪狩蒼弥、映画初出演で「なんで僕?」から芝居の楽しさをつかむまで【インタビュー】
■猪狩蒼弥が俳優一本でないからこそ目指す“俳優像”「猪狩蒼弥がチラつく役者に」
――今回の作品を通して演じる楽しさみたいなものはどこに感じましたか。 僕は基本、グループ活動していることもあり、これまではどちらかといえばバラエティーにウェイトを置いた方がいいのかな、と思っていたのですが、映像の大きな仕事をいただいて。撮影中も僕が出せる限りの力を出したけど、本当に皆さんの期待に応えられたのかはぶっちゃけ、終わった段階ではつかめなかった。試写まで2年ぐらい空いて『あれで大丈夫だったのかな』とちょっと頭のどこかでありながら過ごしていました。2年前の自分が一生懸命取り組んだものを初めて試写という形で観た時に、すごくうれしくて。自分がやったことが具現化されて、これから世に出される。初めて実る。いろんな人の思いが乗っかって…ストーリーがあって、その片隅に自分が存在している喜びを、すごく感じました。世に作品が出て、世間の人に届いて初めて“成功”と言えると思うのですが、すごく楽しい。もっと自分ではできていると思っていたところや、意外と僕が思っているようにはなっていないんだなみたいなところも結構あって、なんなら1回撮り直したいと思うぐらいのところまでいけたことも、自分本位かもしれないけど、すごく楽しいなと思いました。同時に、きっと楽しむからには成功させる責任もつきものだから、これからしっかりといろんな人に届けるように。お芝居の楽しみを味わわせていただきました。 ――この出演解禁のコメントの時に、役者としてはまだまだ未熟だと。今後はこういう役者を目指していきたいみたいな展望はありますか。 もう未熟も未熟で、まったく場数も踏んでないですしワークショップも行くけど、本業の役者さんとはやっぱり厚みは全然違う。同世代の役者さんと差を埋めようと思ったら、音楽辞めるぐらいの覚悟がないとたぶん追いつけない。だからこそ、自分が目指したいのは、今回の作品は別として、僕は猪狩蒼弥がチラつく役者に逆になりたいです。この考え方がいいか悪いかはわからないですけど、プロの役者さんには絶対かなわないって正直思うんです。バラエティーに対しても言えることで、本職でやっている方、プロの芸人さんには絶対かなわない。プロのアーティストにも絶対かなわないんです。だけど、僕の中でスターの定義はやっぱり“その人がチラつく”ということ。『なにをやってもキムタク(木村拓哉)だよね』って、僕はこれ以上にない賛辞だと思う。今回のように作品の世界に染まることができることも、すごいことなんですけど、『何をやっても猪狩になってしまう』じゃなくて『猪狩がどこかにいる』というか…もっとこの先何年後かにそういうふうになれたらいい。僕はそれがすごくスターっぽいと思う。本気で役者をやりたかったら、音楽もダンスもやっている場合じゃない。役者一本ではないからこそ、役者さんとは違う意味で映像に携われる存在になれたらいいな。 ――最後に今作の見どころをお願いします。 偉そうなこと言えないですが、こういうセンシティブな内容、社会的なテーマは触れづらいことだし、 あんまり主張しづらいことだと思うんです。僕も猪狩蒼弥としてテレビとか出ていきなり『おかしいじゃないですか!』とは言えない。だけど何かに変換して社会に投げかけることは、エンターテイメントの特権で、ある種アート。考えるきっかけを作るきっかけになるなと思います。もしかしたら作中に起こっているようなことに実際に遭われている方も大勢いるかもしれないから『ぜひ劇場でご覧ください!』っていうふうには僕はあんまり思わなくて、それよりもむしろそうじゃない人、無縁だと思っている人こそ、考えるきっかけになってくれたらうれしいです。