ガラスや壁が発電? 薄暗い場所でも発電できる「色素増感太陽電池」とは?
一見ステンドグラスのような普通のガラスなのに、発電もできて蓄電もできる。しかも、早朝や夕暮れでも発電能力が一般な太陽光電池のように落ちない。そんな夢の様な研究が進んでいます。「色素増感太陽電池」。聞きなれない言葉ですが、すでに実用化手前まで来ています。発電の未来を変えるかもしれないこの電池、いったい、どんな発電方法なのでしょうか?
研究を行っているのは東京大学先端科学技術研究センターの瀬川浩司教授のグループ。2009年からは内閣府の最先端研究開発支援プログラムの助成を受け、国内外の20以上の企業や団体が加わって、研究とフィールド実験が進められています。 「色素増感太陽電池」は、電気を通す透明なガラス、色素をまとった酸化チタンナノ粒子薄膜、電解質を組み合わせて作られます。太陽からの光を色素が吸収すると電子を放出、その電子を酸化チタンが受け取って電気を作るという仕組みです。光を当てると酸化チタンが発電する性質がNature誌に論文発表されたのは1972年。発見者の名前を取って「本多藤嶋効果」と呼ばれています。 なぜ色素が必要なのでしょうか? 酸化チタンは、紫外線防止のため化粧品に使われている手に入れやすい白い物質で、そのままでは太陽の光をはね返しやすいため、そこに太陽の光を吸収しやすいように色素をまとわせる工夫が必要になります。それが「色素増感」です。瀬川教授はこの原理について「植物の光合成に似ている」と説明します。 目に見える光だけでなく、紫外線や赤外線も集められる効率のよい色素を開発することは、製品化に向けてのカギです。電池の性能を上げると同時にデザイン性を持たせることにもつながっているからです。 植物の葉緑素は緑ですが、色素を変えてガラスで挟むと赤や紫、青、黒といったカラフルなステンドグラスのような電池が生産可能になるのです。さらに、発電できるガラスが実用化できるということは、建築物のガラスに発電能力を持たせることもできるようになります。 しかも、「色素増感太陽電池」は太陽光の角度や光の強さを選ばないという特徴があります。工務店に「ソーラーパネルは南に向けてください」と言われません。太陽の光が直接当たらないビルの壁など日陰となる場所でも発電ができるのです。