ガラスや壁が発電? 薄暗い場所でも発電できる「色素増感太陽電池」とは?
発電を考える場合に避けて通れない考え方が「設備利用率」です。設備容量に日照量を掛け算したものが電力量ですから、天気が悪いと設備利用率が下がります。 現在普及している太陽光発電の設備利用率は12%前後と言われています。夜間は太陽がありませんし、朝方や夕方は発電量が落ちるからです。これに対し、「色素増感太陽電池」は、薄暗い時間帯の発電能力がさほど落ちないため、瀬川教授は「設備利用率は楽々と今の太陽光発電を超えるだろう」と話しています。 また、一般的な太陽光発電は、シリコンの結晶を薄くスライスして作りますが、「色素増感太陽電池」の主な材料はペースト状の酸化チタンです。言ってみればインクをガラスなどに印刷するように製造できるので、印刷するデザインを自由にできるばかりでなく(初音ミクがデザインされた電池もあります)、薄型化と低価格化が可能。製造機械のコストは従来の方法と比べて2分の1程度になると期待されています。 さらに画期的なのは、太陽電池そのものに蓄電機能を持たせることもできるということです。ソーラーパネルで発電した電気は、外部の電池に充電するやり方が一般的ですが、色素増感太陽電池では工夫すると蓄電機能を内蔵させることもできるので、周囲が暗くなってもガラスや壁から安定した電力を供給できるのです。 課題がないわけではありません。「光のエネルギーをどれだけ電気エネルギーに変えられるか」を示す考え方を「変換効率」と言います。すでに市販されている太陽光発電は20%前後ですが、「色素増感太陽電池」は高くても14%程度とまだ及びません。電池そのものの寿命は市販の太陽光発電と比べてまだ短く15年程度です。 しかし、暗い場所での発電に強く、意匠性が高い。しかも安価に作れ、蓄電もできるという「色素増感太陽電池」。建築資材としてはもちろん、電球の光でも発電できるので、瀬川教授は「室内で利用する電源にも使える道を拓くだろう」と話しています。 <注>色素増感太陽電池が全て蓄電機能を持つわけではありません。内部構造を工夫することで蓄電が可能になります