タカタのエアバッグリコール その原因はどこにある?
何が不具合をもたらしたのか?
前述のウォールストリートジャーナルは、タカタが米当局に提出した書類を根拠にして、湿気問題の原因について報道している。それによれば、ワシントン州の工場で、インフレーターに入れるガス発生剤の分量を自動チェックするシステムのスイッチが切られていたことや、メキシコの工場で部品乾燥用の除湿器のスイッチが切られていたことなどが報告されている。 これらが事実とすれば、設計時に意図した生産手順が守られていないことが原因ということになる。マーチのケースも不具合に至る理由はやはり生産時のミスであり、どちらも生産現場の人的要因である。リスクヘッジのために用意された自動チェック機の電源を切ったり、乾燥器を止めたりすれば、製品に不具合が発生することは普通なら容易に想像できる。直截的な言い方をすれば労働者に質的問題があったのではないかと考えられるのである。 生産管理技術者はまさか現場が、ヒューマンエラーに対する各種補完システムの電源を勝手に落とすことまで予見できなかったのではないか。生産管理技術者がどこの国の人かは解らないが、仮に日本人だとすれば、例えば日本の労働者の質に慣れてしまって対応を誤った可能性は高い。想像力の欠如と言えばそう言えるのかも知れないが、筆者自身に当てはめて考えれば、そこまでの想像は難しいだろう。
工場立地は誰が決める?
一般的にサプライヤー(部品供給業者)は、自動車メーカーの工場の近隣に生産設備を持つ必要がある。自動車メーカーはコストダウンのために「ジャストインタイム納品」を要求するからだ。ジャストインタイム納品とは、必要とされる部品を必要とされる時に必要とするだけの数納入させ、メーカーが在庫を持たない方法だ。カンバン方式という呼び方もある。 その時間指定は極めて緻密に組み上げられており、部品を積んだトラックが早目に着くことさえ許さない場合がある。トラックから直接生産ラインに運び込めるようにすれば、工場にパーツヤードを持たなくて済むからだ。 パーツヤードの敷地はもちろん上屋や機材、作業従事者の給与、光熱費に至るまでゼロにできるのである。さらに言えば部品の在庫は資産として計上されるので、決算時には課税対象になる場合が多いが、それも払わなくて済む。ジャストインタイム納品にはそういう数々のメリットがある。そのためにトラックは工場の周辺をグルグルと走って納品時間を正確に調整する。 この緻密な納品時間に遅れればラインが止まって補償問題で大変なことになりかねないので、遠距離から部品を運ぶわけにはいかない。サプライヤーは、メーカーの工場の近くで生産せざるを得なくなるわけだ。自社で生産拠点を選べないこの枠組みの中で、良質な労働者を確保して生産手順を遵守させることはそう簡単にはいかないだろう。