タカタのエアバッグリコール その原因はどこにある?
リコール問題へのタカタの対応
事態を重く見た米国運輸省道路交通安全局は、10月20日にエアバッグ部品の交換を促す声明を発表し、これを受けてタカタは10月22日発行のリリースで、当局と修理を実施する自動車メーカーへの全面協力を発表。その台数を474万台とするとともに、その費用は当該期の製品保証引当金に繰り入れられており、新たな費用負担が限定的であることを強調した。 調べてみると、実はこのリコール問題は今回突然発生したわけではない。「製品保証引当金」が準備されていることからも明らかなように、すでに数年前からリコールは始まっており、その範囲が相次いで拡大されている。でなければ474万台ものリコールにかかる費用が引当金として計上されていることはあり得ない。先回りが過ぎる。 この問題を特集した外紙ウォールストリートジャーナルによれば、2007年に米国で4件の同一原因の事故が発生しており、タカタは全力を挙げて原因究明と対策を行った。結果、不具合のある車種と年式が特定され、その他には問題はないはずだったのだ。 しかしこの大丈夫なはずのラインが幾度も修正されていく。泥縄式に見えるその追加発表により、タカタの「ここからは大丈夫です」は信頼されなくなった。すでにアメリカでは高温多湿なエリアに限定していたリコールが全米に拡大しそうな流れになっている。 マーチと同様の原因によるリコールが米国でもあるとすれば、全米を対象とする必要があるだろう。問題はそこで何年何月から何月に○○工場で生産されたものに限ると言ってももう信用してもらえない状況になっていることだ。「タカタ製は全部交換」を求められかねない。問題が発生した時の原因究明と対策が正確かつ迅速に行われないとどこまでも対応範囲が膨張していってしまう恐ろしい現実がそこにはある。 タカタは、前のリリースの翌23日に追加リリースを発表し、リコール台数が拡大していることを認めた。費用負担について再度限定的であると繰り返し説明をしている。それは「拡大はするが、全米を対象にするわけではない」という意味にとれる。全米が対象なら限定的で済まないはずだからだ。しかし、このリリースでは台数を明らかにしていないので、タカタが対象範囲をどうするつもりでいるのかははっきりしていない。詳細が解り次第開示すると述べるだけだ。 実際のところリコールは自動車メーカーが行うものであってサプライヤーが勝手にはできない。そのあたりのメーカーとの調整が簡単に済まないということもあるだろう。それは解るが、今の流れでこのリリースはあまり上手い情報公開には見えない。事実はともかく「何とか少なく済ませたい」という逃げの姿勢と取られたら、なに一つ得にならないからだ。 結局12月5日時点では公式な台数は不明なままだが、タカタは11月27日のリリースで、昨年1株あたり15円付いていた配当をゼロの無配とすることを発表。無配の理由には触れられていないが、常識的に考えれば、補償範囲が広がった時の莫大なリコール費用に備えるものと考えられる。最悪のケースを想定すればそうせざるを得ないはずだ。