「『ちむどんどん』の悪夢がふたたび…」「橋本環奈の無駄遣い」 新朝ドラ『おむすび』に噴出した批判が的外れであるワケ
さらに第5話でも、スナックの店主・ひみこ(池畑慎之介)から「やっぱり神戸帰りたいと?」と聞かれた聖人が「はい。まあいつになるかわかりませんが。向こうで床屋ばやりたいです」などと語るシーンがあったのです。 物語は2004年(平成16年)4月からスタートしただけに、聖人の言う「9年2カ月と20日前」は1995年1月あたり。作品の舞台が福岡県糸島と兵庫県神戸であることは各所で明かされていただけに、「阪神・淡路大震災を描くのではないか」「結たちは神戸から糸島に移住してきただろう」と気づいた人もいるでしょう。
むしろ制作サイドは、「見たくない人が不意に震災のシーンを避けられるように、内容を適度に事前公表する」などと配慮する姿勢を見せていました。また、阪神・淡路大震災を描くにあたって、被災者を中心に取材を重ね、多くの資料を集めたことも明かされています。 震災当時はどんな状況や心境であり、それが時間の経過とともにどう変わっていくのか。それとも、なかなか変われないのか。主人公の家族が被災者だけに、震災を真っ向から描くことになるのでしょう。
それらの描写は、朝ドラ王道の戦争に劣らぬシビアさがあり、「『誰かのせいにできない』という点で自然災害のほうがつらい」という人もいるかもしれません。第1週を「退屈」と感じた人や“戦前戦後の偉人伝”を好む人も、震災のシーンを見たら「おむすび」の印象が変わるのではないでしょうか。 冒頭にあげた通り、結が栄養士になり、令和まで描くことが予告されていますから、震災は序盤の段階から描かれるでしょう。 さらに、第15週の75話(金曜日)に震災から30年となる1月17日を迎えるだけに、当日の放送でどんなメッセージを伝えるのか。制作サイドの真摯な姿勢を見る限り、少なくともそのころまでには「退屈」という声は消えている気がしてならないのです。
■令和の重苦しいムードを吹き飛ばす 朝ドラは平日5日×半年間の長丁場だけに、第1週のようなほのぼのとしたムードのみで描き切るのは難しいところがあります。ほのぼのとしたムードからガラッと変わる瞬間が作品の評価を左右する1つの勝負時であり、それは阪神・淡路大震災の描写になるのでしょう。 根本さんは「監察医朝顔」(フジテレビ系)で東日本大震災を真っ向から扱った経験があるほか、深夜帯ではさらにシビアな人間模様を描いてきました。