帰郷しても「地元の人がいない」杜氏の“複雑な思い”…能登半島地震で蔵が倒壊「もっと外部支援を」震災ボランティアも指摘する被災地の現状
そんな中で見つかったのが能登末廣と書かれたお猪口。酒蔵再建の資金を集めるために販売するか無料で配るのかで迷っていました。 中島さん「もともと、僕の所のお酒は相当好きでないとわざわざ調べないところにあった酒蔵なので…。能登が被災したからどうのこうのじゃなくて…(買って)応援してくれるのはありがたいんですけど…できるだけこういう蔵があるよと言うのがわかってもらえたらいいなと思いますね。すごく長いスパンで、見てくれている人に対して、ちょっとしたお礼の気持ち、みたいな感じで、そういうのに使えたらなと」 蔵の復興について多くを語ろうとしない中島さん。その背景には奥能登がこれまで抱えてきた複雑な事情がありました。 ■道路には未だ“がれき”…地元出身の杜氏が語る“背景” 酒蔵の近所を歩きながら、中島さんは景色が変わらない現状を語ります。 中島さん「屋根の上をみんな何て言うんですか、おじいちゃんとかも危ないところを歩いていたのを道を開けて頂いたので…」 中島酒造店がある輪島市鳳至町。未だ、がれきが道路にまであふれています。 中島さん「鳳至というこの地区が、この通りを見渡してみても空き家だらけなんですよ。もともとが。なので、持ち主がいないので(解体が進まない)。やっぱり生まれ育った場所なので帰ってきたいと思うんですよ。僕もそうですし。でも、戻ってきても仮設住宅に住まないといけない。僕らの同世代の話をすると…収入がないんですよ。こっちに帰ってくると。もともと仕事がないという田舎の特有のはありますけど…地元の人がいない」 過疎化に高齢化、そして震災。加えて、能登を離れた避難者が戻るのか。課題は山積したままです。 ■「もっと外部支援を」酒米を掘り出したボランティアに“感謝の酒” 中島さんが帰郷した夜。 蔵に残る輪島塗の器には、掘り出した酒米から作られた新種が注がれます。周りからは「ひゃーおいしそうー」と嬉しそうな声。この日の夜、留守を預かってくれた人たちに中島さん自ら手がけた新酒を振る舞いました。