日本唯一のレア種別「特快速」どんな意味? 乗ったら確かに速い! 急勾配をカッ飛ばす路線
平日朝に2本のみの「特快速」
兵庫県の神戸電鉄には、全国でここだけの列車種別「特快速」があります。駅の案内放送を聞くと「とっかいそく」と読むようです。英語では「SPECIAL RAPID EXPRESS」と表記されるので、直訳すると「特別快速急行」でしょうか。 さらに、その特快速は非常にレアな列車でもあります。神戸電鉄三田線の三田駅を、平日朝に出る新開地行きの2本のみであり、発車時刻も6時47分および7時2分と早朝です。どんな列車なのか、筆者(安藤昌季:乗りものライター)は2024年5月に乗ってみました。 【写真】特快速で「廃駅」を通過! ホームそのまま! 特快速といっても車両は一般的な電車です。乗車当日は、1973(昭和48)年に製造開始した3000系がやってきました。急勾配が連続する路線のため、全ての車両が電動車です。 到着時、電車は行先や列車種別の書かれた方向幕を回しました。そこには「特急」もありましたが、これは1998(平成10)年に廃止された種別です。目当ての特快速とは「特急より遅いが、快速より速い」という意味の列車種別なので、特急が廃止され、本来の意味を失っています。三田線や有馬線には「急行」「準急」もありますが、特快速は急行より上の列車種別なので、素直に特急でもいいのでは――と思わなくもありません。 さて、早朝の三田駅では各車両10人程度の乗車でスタートしました。次の三田本町駅には6時49分着。ホームに5~6人の乗客がいました。6時51分着の横山駅ではざっと数えて60人ほどがホームで待っており、座席の大半が埋まりました。
きつくなっていく勾配
6時53分発の神鉄道場駅では30人ほどが乗車。車内の雰囲気がラッシュ時らしくなってきました。物見遊山で乗っている筆者が座席を埋めるのも気兼ねするので、運転席の後ろに移動。3000系は窓が大きく前面がよく見えました。6時56分発の道場南口駅では乗車ゼロ。単線で、そこまで住宅は増えていない区間であり、のんびりした自然の中を走ります。最高速度は80km/hで、なかなかのスピード感でした。 二郎駅には6時57分着。40人ほどが乗車し、立ち客で後ろが見通せなくなりました。田尾寺駅では列車両数増加に備え、ホームの延長された部分が柵で仕切られています。ここでも30人ほどが乗車。まだ7時ちょうどなのに、かなりの乗車率だと感じました。 田尾寺駅を出発すると、複線用の用地が確保されており、準大手私鉄だったこともある神戸電鉄の潜在需要を感じさせます。7時4分着の岡場駅では40人ほどが乗り込みました。 特快速はここまで各駅に停車しましたが、ここから五社駅、有馬口駅を通過します。三田線で通過駅があるのは特快速だけです。勾配や曲線もきつくなってきました。三田線の最急勾配である33.3パーミルを示す標識も目に入ります。パーミルとは千分率で、この場合は1000m進むと33.3mの坂を登るという意味です。JRなら「最大の難所」レベルの勾配ですが、対策された神戸電鉄の電車はスムーズに走っていきました。 有馬温泉への支線が分岐する有馬口駅を通過すると、有馬線に入りました。ここからは六甲連山を越える線形で、勾配がさらにきつくなります。唐櫃台(からとだい)駅を通過すると、45.4パーミルの急勾配。車内でも坂なのが分かるほどの傾斜で、景色も迫力がありました。