坂口健太郎や有村架純も来場! 「釜山国際映画祭 2024」序盤の注目ポイントを総括
イ・ソンギュンの追悼も
今年の開会式で会場にいるすべての人たちの胸をぐっと締め付けた瞬間は、昨年末に亡くなった俳優イ・ソンギュンの追悼の場面だったと思います。古くからの韓国ドラマファンにとっては「コーヒープリンス1号店」の愛犬「モップちゃん」を可愛がるイカしたアーティストとして、また「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」の優しく寂しい「おじさん」として、韓国映画ファンには『最後まで行く』のチンケな悪徳警官として、もしくは『パラサイト 半地下の家族』のいけ好かない金持ち男として、そりゃもうたくさんの面白い作品や傑作を残した俳優として知られている存在で、その死には衝撃を受けた人も多かったと思います。私自身、あまりにショックを受けてしまって、しばらく彼の名前を口にすることがぜんぜんできなくなってしまったんですが、今回の映画祭でなんというか、本当に亡くなってしまったんだなあというのが、一定の距離感を持って受け入れられた感じです。
今回の映画祭では、イ・ソンギュンに関係するイベントがふたつ用意されています。ひとつは功労賞の授与と開会式での追悼。開会式では彼の代表作である「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」のテーマ曲をフルコーラス使い、韓国でもつい最近公開された遺作にして最新作『幸せの国』から遡る形で、その出演作と名場面を編集した映像が流れました。 ちなみにドラマ「私の国」は、1979年に起きた韓国の大統領暗殺事件の後日談を描いた作品で、ソンギュンが演じたのは事件に関わった実行犯のひとりで、現役軍人だったためにすぐに処刑されてしまった実在の人物。人権弁護士チョ・ジョンソク(「賢い医師生活」)と戦ったその理不尽な裁判の模様を描いており、公開中の映画『ソウルの春』に続く作品です。
司会のパク・ボヨンが「本当に痛切な別れでした。彼の出演作ドラマ『私のおじさん』の最後の台詞のように、私達は彼が求めていた平穏を見つけたことを心から願います」というセリフで映像を締めくくったのも印象に残りました。映画『最後まで行く』で共演のチョ・ジヌンも、ドラマ「トリプル」で共演のソン・ジュンギもみーんな泣いていました。
映画祭会期中は「美しい人 イ・ソンギュン」という特集上映も。それこそ今はストリーミングの時代で、釜山にこなくても特集上映できちゃいますから、ぜひこの週末はイ・ソンギュンの名作を見ていただけたら! 特に「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」は、韓国ドラマ史に残る傑作中の傑作で、韓国では多くの人が「人生を変えたドラマ」として挙げる作品です! 『幸せの国』も、きっと日本のどこかの配給会社が買ってくれているはず!