「あぁ、今日もよく働いたなあ」を繰り返して、気づけば108歳に。現役理容師・箱石シツイさんが語る“生涯現役”人生の秘訣
2021年に開催された東京オリンピックで、聖火リレーのランナーを務め話題となったご長寿の女性は、その時点でなんと御年104歳! 雨の中をしっかりとした足取りで聖火をつなぎ、その光景が新聞やメディアでも大きく紹介されました。 【写真】毎日元気な77歳の料理家・栗原はるみさんが「普段食べている食事」を公開! その時にランナーを務めたのが、栃木県で理容室を営んでいる箱石シツイさんです。 シツイさんは現在108歳。今もご自分のお店で元気にハサミを握る、理容師歴94年(!)の「現役理容師」です。 12歳で奉公に出て、14歳で上京して理容師修行。20歳になって理容師免許を取得し、22歳のときに結婚。念願だった自身のお店も持ちました。ですがその後は夫が出征して戦死、さらに空襲でお店が焼けるなど、耐え難い不幸が続いたといいます。2人の子供たちと親子心中を図ろうとしたこともあったのだとか……。 箱石シツイさんの著書『108歳の現役理容師おばあちゃん ごきげん暮らしの知恵袋』には、そんな壮絶な1世紀を生き抜いてきた、たくましくも優しいシツイさんの言葉が綴られています。 そこで今回は、今も「理容師」としてハサミを握り続ける108歳のシツイさんの本から、生涯現役で楽しく過ごすための暮らしのヒントを、一部抜粋してご紹介します!
健康に気をつけるようになったのは70歳頃。それからは散歩が日課になりました
身体は小さかったですけど、とにかく丈夫でね、健康でした。 12歳で奉公に出てから働き詰めでしたけど、仕事を長く休まなくてはならないような、大きな病気はしたことないです。風邪もあまり引かなかったかな。 寝込んだことは……出産のときぐらいですね。娘を妊娠したのは、夫と新宿にお店を開業して、お客さまが増えてきて軌道に乗りつつある頃で。とても忙しくて、妊娠6ヶ月まで病院にも行きませんでした。それで、息子のときは夫が気遣ってくれて早めに入院させてくれました。 毎日寝ていた記憶はそのときと、102歳で肋骨を折ったときしかありません。 そうそう。病気といえば、50代の頃に腎臓を悪くしたことがあります。それで顔がむくんで目が開かないような時期も少しありました。けれど、それほど重症にもならずにだんだん落ち着いてきましたね。それからは、塩分摂りすぎだけは気にしていました。この辺は塩分の摂取量が多いことで知られている地域なんです。ここ那珂川町は、あの頃、馬頭町という町名だったんですけど、「食塩摂取日本一」だったんですよ。あまり良くない日本一ですね(笑)。 それで高血圧の人が多いので、栄養士さんが来てくれて「減塩の食生活指導」なんていうのがあったりしたほどです。「谷川サロン」(※)で、「お茶請けに」って、みなさんが自慢の漬物を持ってきてくれるものですから、おいしくてよく食べていたんですよね。それが一因かもしれないと気づいて、それからは我慢して、控えるようにしていました。 ※当時はお店の住所が「馬頭町谷川」だったので、お客さんからこの名で親しまれたそうです。 「そろそろ健康に気をつけたほうがいいのかな」と思うようになったのは、食事を意識し始めたのと同じく70歳を過ぎた頃です。それまで健康の心配がないまま年を重ねてこられたのは、本当にありがたいことですよね。どこそこが痛いとかもなくて……まあ、どこかに足をぶつけると痛いとか、そんなことは人並みにありますけどね。立ち仕事ですから、もしかしたら人よりは足腰は丈夫なのかもしれません。