月面機スリム「ピンポイント着陸」を確認 今後の“復活”へ高まる望み
エンジン故障も、異常対応モードで粘り抜く
高度約50メートルで、2基の主エンジンの1基が推力を喪失したことが分かった。航法用カメラが、スリムから脱落したエンジンノズルが月面に落ちている様子を捉えていた。直前まで正常に作動していたことなどから、スリムチームはエンジン以外の何らかの要因が異常を招いたとみて、解明を目指す。 主エンジン1基だけが作動する状態となったことを、搭載ソフトウェアが検知。すぐに異常対応モードに移行し、機体の位置のずれを抑えるよう姿勢を自動制御しながら降下を続けた。ただ、水平方向の速度や機体の姿勢が計画を外れてしまったため、計画通りに太陽電池のある面を上に向けて静止することはできなかった。
高度約5メートルで2体の小型ロボット「レブ1」「レブ2」を分離し、いずれも月面で活動した。このうち中央大学などが開発したレブ1は飛び跳ねて月面を移動し、地球との通信にも成功。タカラトミーなどのレブ2は計画通りに変形して移動し、さらに月面のスリムを撮影できた。画像には、スリムが転倒して静止している様子が明確に写っている。レブ1とレブ2により、日本初の月面ロボットが実現した。月面を飛び跳ねる移動、地上の指示によらない自律した動作などが、世界初になったという。
レブ2の愛称は「ソラキュー」。JAXAが科学技術振興機構(JST)から「イノベーションハブ構築支援事業(太陽系フロンティア開拓による人類の生存圏・活動領域拡大に向けたオープンイノベーションハブ)」を受託し、小型ロボット技術、制御技術について共同で行う契約をタカラトミーと結んで実現。今回の月面でのスリム撮影に結実している。
スリムが搭載した科学観測用の分光カメラも試験的に動作させ、月面の画像が地上に届いている。
「この成果をカタパルトに、惑星探査拡大へ」
スリムは独自の「2段階着陸」を実施する計画だった。まず1本の「主脚」で月面に接地し、次に残り4本の足も使い、傾斜地に倒れ込んで静止するもの。しかし主エンジンの異常が引き金となって計画通りに着陸しなかったため、結果的にこの着陸方式は実証に至らなかった。