月面機スリム「ピンポイント着陸」を確認 今後の“復活”へ高まる望み
月の昼間は、地球の2週間ほどに相当する長さがあり、着陸地点では来月1日の日没まで続く。スリムの太陽電池は西を向いており、今後“昼過ぎ”となり太陽光が西から当たるようになれば発電し、スリムが再起動できる可能性があるという。ただ、仮に太陽電池が機能しても、他の搭載機器が昼の高温に耐えて生き延びているかは、未知数という。
JAXA宇宙科学研究所の國中均所長は「ピンポイント着陸技術の獲得は大きなステップ。(資源として使える水の氷があるともいわれる)月の極域や、(JAXAの火星衛星探査計画の)MMXでの衛星フォボスへの着陸に応用できる。宇宙研はこの成果をカタパルト(射出装置)にして、惑星探査を拡大させたい」と強調した。
20日の会見で着陸の点数を問われ「ぎりぎり合格の60点」とした國中氏。5日経ち、一連の状況説明に続いて再び同じ質問を受けると「分光カメラとレブ1、レブ2が動いたので、各1点加算して63点」と応じた。相変わらずの辛口評価だが、この日は安堵(あんど)がうかがえる笑顔もみられた。
スリムはエンジントラブルにも堪えてピンポイント着陸を実現し、計画の主目的を達成した。小型ロボットも作動し、既に画期的成果を上げたことは疑いない。今後もし太陽電池が復活すれば、分光カメラを本格作動させ、地下のマントルから月面にむき出しになった「かんらん石」の組成が分析できる。月の起源の謎に迫るという、この観測にまで到達できるだろうか。スリム復活の期待がいよいよ、膨らんできた。 (草下健夫/サイエンスポータル編集部)