「お客様は神様」の時代は終わり…カスハラ対策の動き広がる
客による暴言などの「カスタマーハラスメント(カスハラ)」への対策として、福井県内企業で禁止事項や対応方針を文書などで明示する動きが広がっている。カスハラが時に犯罪や従業員の離職などにつながるためだ。専門家は「『お客様は神様』という時代は終わった。企業は客の理不尽な言動に毅然と対応する必要がある」と訴える。(佐藤祐介)
「従業員の人権を守ることを大切にし、それを阻害する悪質な言動や行動・過剰な要求などのカスタマーハラスメントの根絶を目指す」――。 県内を中心にスーパー銭湯などの温浴施設を運営するイワシタ商事(福井市)などは9月下旬、全12店舗の番台などに、こんな文書を一斉に貼り出した。タイトルは「STOPカスハラ・セクハラ宣言文」。暴言や暴力、過剰な謝罪要求などには組織的に対応し、場合によっては警察に通報するとしている。 カスハラは、従業員が顧客や取引先から受ける理不尽な要求や不当なクレームのことで、厚生労働省は土下座の強要や脅迫、過度な金銭補償の要求などを例示する。脅迫罪や暴行罪などにあたる恐れがあるほか、従業員が心身の不調で離職や自殺に追い込まれるケースも相次ぐため、小売り・サービス業界を中心に問題化している。
イワシタ商事でも今年、▽ロッカーの鍵を従業員に投げつける▽入浴料が高いと番台にチケットをたたきつける――などのカスハラで複数の従業員が離職。宣言文の作成を決めた。担当者は「お客様の意見・要望には真摯に対応する一方、大切な従業員が安心して働ける職場づくりも進めたい」と強調する。 従業員はこうした対応を歓迎しており、「越のゆ福井店」(同市)の番台担当者(29)は「理不尽なことを言うお客は目に見えて減った。スタッフが安心して働くために必要なことだ」と話す。 一方、ドラッグストアのゲンキー(坂井市)は11月から、県内外の全439店舗で「カスハラに類似する行為が見られる場合、来店を断ることがある」という内容の店内放送を1時間おきに流している。担当者は「従業員とお客様の両方が安心できる環境を整備したい」と説明する。