「2021名古屋市長選・河村市政12年の検証」第2回 混迷深まる名古屋城木造化
選挙の争点にならなくても…
「いよいよ実現!名古屋城木造本物復元」「事業前進」――。 自身がこだわる「昔のままの復元」「天守取り壊し先行」を文化庁が許可する見込みはほとんどなくなっている河村市長は、今回の市長選の政策の片隅で、こう書いている。一方、対抗馬である元自民党市議の横井利明氏も、小さく「4年間完全停滞した木造復元事業を実現」と書いているだけ。横井氏は木造復元には賛成してきたが、これまでの経緯などから、文化庁が建て替え許可の検討を始めるまでにはまだまだ相当な時間がかかることをよく理解しているからこそ、目立たないように書くしかなかったのだろう。 名古屋城木造復元事業の事業費は505億円超とされ、市はこれを市債でまかない、入場料で返済する計画だった。しかし、50年間、月平均で約30万人以上もの入場者を集めないとこの計画は実現できず、昨今の情勢を見る限り、現実味はない。 その一方で、2019年度末までに、すでに69億6800万円あまりがこの事業に投じられており、既に購入済みの2000本を超える木材の保管費用だけでも年間約1億円が必要だ。しかも木材の購入は今も続いている。実現の目処もたたないまま経費だけがかかっている状態だ。 名古屋城の木造復元問題は、市民の関心が薄く、今回の選挙戦の大きな争点にはならないかもしれない。しかし、候補者、そして次期の名古屋市のかじ取り役が何らかの結論を出さなければならない問題であることは間違いないだろう。 (歴史ライター・水野誠志朗/nameken) * 4月11日告示、25日投開票の名古屋市長選を前に、河村市政の12年を検証する連載。第2回は、名古屋城の木造復元をめぐる問題を振り返った。最終回となる第3回は、本来、首長にとって重要なはずの防災や環境などについて考えていきたい。