最悪1年間出場停止処分も。比嘉の計量失格はなぜ起きた?責任は誰にある?
そして、もうひとつの問題は2月4日のV2戦から約2か月しかないという短期スパンだった。前出の浜田代表は「2月の試合は1ラウンドで終わってダメージもなかったし4、5キロは増えただろうが、逆に2か月しかないので、そんなに増やさなくて、いいので(短期スパンは)いいのかなと思っていた」と見ていた。おそらく具志堅会長も同じ考えだったのだろう。だが、結果的に、それは裏目に出た。 減量も含めた過酷な準備は、試合が1ラウンドで終わろうが12ラウンドで終わろうが変わらない。野木トレーナーは、減量の反動で“ドカ食い”をすることを常に注意していたが、心身の“休養”というメリハリがないまま、過酷な次の準備に入ったため、おそらく比嘉のメンタルも肉体も悲鳴を上げていたのかもしれない。 おまけにバラエティ番組への出演などの練習外の仕事も目についた。WBCは30日前、7日前の事前計量を定めており、それはクリアしていたが、“落とすに落とせない”という危険信号が出ていたと聞く。 最近、ほとんどのボクサーが取り入れているのが、直前に体内の水分を排出する“水抜き”という減量方法だ。計量直前に1キロから3キロほどを一気に落とす。それには塩分を先に排出しておくなど準備も必要で体調とも関係するため失敗するボクサーが少なくない。比嘉も“水抜き”の減量法を使っていたが、どこかで調整が狂ったのだろう。この日、ドクターは「試合を行うことに支障はない」と判断していたが、計量前に計った脈拍「84」、血圧「158/99」という数値も異常を訴えたものだった。 具志堅会長は、「私たちの時代は年に4試合は当たり前だった」という考え方を持つ。だが、ハングリーのない今の時代に過酷な減量負担のあるボクサーに対して昔のやり方は通用しない。 そもそも比嘉に“緊急登板指令”が巡ってきたのも、予定していた世界戦が白紙になったことでマッチメイクに困った放映局側が動いたという側面もある。 具志堅会長が、断れば済む話だったのかもしれないが、昨年10月には一度、断っているという経緯や沖縄での単独防衛戦を放映してもらった恩などもあって断ることは難しかったのかもしれない。局側が「選手優先」を考えているのなら、そういうマッチメイクの打診もいかがなものか。 JBCは体重超過の続出に歯止めをかけるため日本独自のルール作りに着手、来週にもまとめる算段を進めていた。「本来は啓蒙すべきで厳罰で抑制することはよくないことかもしれませんが、ここまで体重超過が続くと、階級制の意義が問われる。相応の厳罰を科すことになります」と安河内事務局長。おそらく比嘉には1年間の出場停止と罰金が課せられることになりそうだ。自業自得とはいえ、22歳のスター候補は大切な時間を失ってしまうことになる。 今日の午前8時に決行か、中止かが最終的に決まるが、モチベーションを失い極度に体力を消耗したボクサーを危険なリングに上げていいものだろうか? (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)