「おふろ」いちろうさん、麦田あつこさんインタビュー 忙しい日々に、身も心も解きほぐされる絵本を
昭和の雰囲気漂う雑貨店で主人公が手に入れたのは、不思議なバスボール。家に帰っておふろに入れると、体が蛇口ににゅるりと吸い込まれて……。『おふろ』(12月26日発行、ブロンズ新社)は、装画や挿絵、漫画などで活躍中のイラストレーター、いちろうさんの絵本デビュー作です。文章を担当したのは、編集者として数多くの絵本を手がける麦田あつこさん。どのようにしてこの絵本が生まれたのか、お二人に聞きました。 【画像】絵本「おふろ」中身はこちら
一枚のイラストに魅せられて
―― おふろを舞台にしたファンタジー絵本は、どのようにして生まれたのでしょうか。 麦田あつこ(以下、麦田) いちろうさんがSNSに投稿していた、おふろの蛇口のイラストを見て、あまりに素晴らしくて衝動的に連絡を差し上げたのが始まりでした。 いちろう 2022年11月のことでしたね。 麦田 いちろうさんの絵は視点がとてもユニークで、脳がほわ~んとするような、生理的な解放感があるんですよね。その気持ちよさを体感できるような絵本が作れたらいいなと思って、おふろの絵本を作りませんかとお声がけしました。 いちろう 連絡をいただく少し前に、自分でも絵本に挑戦してみようかなと思って、おふろの絵本のラフを作っていたんです。偶然ですが、そんなタイミングで声をかけていただいたので、ぜひお会いしたいですとお伝えして。当時住んでいた京都まで会いにきてくださったので、おふろの絵本のラフを見ていただきました。 ―― 最初は作家・麦田あつこさんとしてではなく、編集者・沖本敦子さんとしてお会いしたのですね。 麦田 蛇口の絵に魅せられて、そのあたりの区分けは曖昧なまま、衝動的に会いに行ってしまったのですが、その後やりとりを重ねるうちに、いちろうさんの世界がふくらむようなテキストを私が担当させていただき、さらに編集の方に入ってもらうという進め方がよいのではないかということになりました。それで、ブロンズ新社に企画を持ち込み、編集者として佐々木紅さんに入ってもらって、企画が本格的にスタートしました。 ―― 制作はどのように進めていったのですか。 麦田 いちろうさんの絵ありきで、いちろうさんと話し合いながらお話を作っていきました。 いちろう 僕の意見もくみ取りながら、新しい世界観のお話を書いてくださって、めちゃくちゃワクワクしましたね。描きたい絵がたくさん描ける!とうれしくなりました。