メゾン マルジェラ オモテサンドウで「5AC」ハッキングプロジェクトがスタート。シグネチャーバッグ「5AC」をアーティストたちが再解釈
メゾン マルジェラのシグネチャーハンドバッグ「5AC」を、4組の日本人アーティストが再解釈する「5AC」ハッキングプロジェクトが、東京・表参道のメゾン マルジェラ オモテサンドウでスタートした。会期は10月17日まで。 本展はブランドのディレクター、ジョン・ガリアーノが提唱した、衣服やモチーフを、別のタイプの衣服やモチーフにつくり変える「ハッキング」というコンセプトに沿ったもの。このコンセプトからインスピレーションを受け、田中義久と彫刻家の飯田竜太によるアーティストデュオ・ Nerhol、木版画に特化した作品を手掛ける大竹笙子、ドローイングを中心に様々な表現を手掛けるBIEN 、テキスタイルデザイナーとデザインスタジオから成るNUNO | we+がそれぞれ作品を制作した。 ストアの外のウインドウでは大竹が、収集していた布を集めて制作した、カラフルなインスタレーション《HACKED PATCHED》を展開。版画を制作に取り入れる大竹らしく、5ACのシルエットが布に転写され存在感を放っている。 NUNO | we+はキャットストリートに面したウインドウに作品《回転するキューブ - Inverse Equation》を展示。制作過程を表現したという3つのキューブはそれぞれ刺繍の完成具合が異なり、その差異で完成に向かう運動性が表現されている。メゾン マルジェラがこれまで様々なかたちで表現してきた、過程の可視化というコンセプトにも共鳴する作品だ。 NerholとBIENは店舗内に作品を展示。Nerholはこれまで繰り返し制作に用いてきた、紙という素材を改めてとらえ直し、《Canva(Nusa)》を制作した。5ACの前に立てられた、そのシルエットを透過させるキャンバスは、大麻を漉いてつくった紙でつくられたもの。紙を細かく切断したうえで、手でよって糸をつくり、それを使って織り、さらに薄くなるまで擦り、ニカワを塗ることで完成した。この複雑な工程を経て完成したキャンバスを5ACと重ねることで、製品の持つ多様な文脈を浮き上がらせた。 BIENは5ACのなかでももっとも小さいモデルである「5ACマイクロ」を用いてインスタレーション《Visible observation for 5AC》をつくりあげた。BIENは、5ACマイクロがバッグであると同時に実用を超えたアクセサリーとしての意味を持つという、意味の複数性に着目。そのディティールを切り取ったようなMDF製の彫刻を複数制作して製品とともに並べることで、その多面性を表現した。 5ACというアイコニックなバッグを様々に解釈する、アーティストたちの多彩な視点を楽しめる催しとなっている。
文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)