島田珠代「芸人になって初めての恋は、テレビ局のADさん。初デートはあき恵姉さん同伴で。《いい雰囲気》の彼の前から逃げ出した理由は」
「あき恵姉さん。お願いだからデートについてきてほしい」 こうして、初デートはあき恵姉さんという保護者同伴で行くことになったのです。当時の私は、男性に食べている姿を見られるのがものすごく恥ずかしい行為だと思っていて、まったく話に集中することができませんでした。 もしかして「スプーンに乗せるピラフの量多すぎやない?」って思われてる?食べ方が汚いって思われてるのかも。 え、待って。スプーンを口の中に入れるときに、口の中見られてる? そんな考えが頭の中にあふれ出して、私の緊張度はマックス。皿にあるピラフをスプーンで口に運ぶまでの間に、手が震えてすべて床にまき散らしてしまうという失態を犯してしまったのです。 私が、ピラフと格闘している間にも、あき恵姉さんは「どんなところが好きなの?」とお相手に話を振ってくれているのに、私はまったく会話に参加できないまま時間だけが過ぎていきました。 結局、その日の記憶はピラフの具についてしかなく、何度思い返しても何を話していたのか、あき恵姉さんがどんな服を着ていたのかも覚えていません。
◆キスからの逃亡 何回かデートを重ねるうちに、二人でもご飯に行けるようになった頃、その人から「ウチにおいでよ」と誘われて家に行くことになりました。 その人はカメラの勉強もしていたので、自分が撮影した映像を見せてくれて、将来はどんな映像を撮りたいか、そしてどんな仕事をしたいのかについて熱く語ってくれたのが印象に残っています。 自分の夢について語っていた彼が、急に黙り込んで私をジッと見つめた瞬間。私は「あぁ、これが俗に言う《いい雰囲気》ってやつなんだな」とぼんやり考えていました。そっと彼の顔が近づいたとき……私は思ってもいなかった行動を取ります。 自分のカバンをひったくるようにして手に取り、玄関に全力でダッシュ。自分の靴を片手で持ち上げて、そのまま部屋を後にしました。靴も履かずに階段を駆け下りて、前だけを向いて走りました。
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