混迷する徴用工・慰安婦問題 日韓双方の主張を整理する
◎慰安婦問題
《現状》 いわゆる「慰安婦」問題が日韓間で注目され始めたのは、1991年に韓国で元慰安婦が初めて名乗り出てからでした。 日本政府は1995(平成7)年8月15日の村山富市首相談話を踏まえ、慰安婦とされた人々に対する国民的な償いの事業のために「アジア女性基金」を設置し、一人当たり200万円の償い金の支給、日本の道義的な責任を認め、心からのお詫びと反省を表明する総理大臣の手紙の交付、および医療福祉支援事業を行いました。この償い事業は2007年3月をもって活動を終えました。 日韓両政府はさらに、2015年12月、岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相との会談で慰安婦問題を最終的に解決することに合意しました(いわゆる「日韓合意」)。この合意は文書に記載されませんでしたが、両外相の共同記者発表の場で公に、世界に向かって表明されました。この合意の内容は次の通りでした。 (1)日本政府は、全ての元慰安婦の方々の心の傷を癒やす措置として10億円を拠出する。 (2)安倍首相が心からおわびと反省の気持ちを表明する。 (3)韓国政府は、在韓国日本大使館前の少女像を撤去するよう努力する。 (4)両国政府は今回の合意の実行により,この問題が「最終的かつ不可逆的に解決される」ことを確認する。 (5)両国政府は、今後,国連等国際社会において本問題について互いに非難・批判することは控える。 2016年7月、韓国政府は日本からの拠出金により「和解・癒やし財団」を設立し、事業を開始しました。同財団が同年12月23日に発表したところによると、「合意時に生存していた元慰安婦46人のうち、34人が事業を受け入れる意思を明らかにした。そのうち31人にすでに支給を決定し、29人に支給を終えた。残りの人についても支給手続きを進めている」ということでした。 一方、少女像の撤去は、日本政府は折あるごとに韓国政府にその実行を求めていますがまだ実現していません。また合意から約1年後、釜山の日本総領事館の前にも少女像が設置されましたが、韓国政府はこれも当然撤去すべきです。