荒廃するウクライナがまさかの「資源大国」に…! 戦争が生み出す「新時代の石油」の正体
AI開発に欠かせないデータ
現在のAIは、そのほとんどが機械学習という手法で開発されている。これは何らかの参考になるデータ(学習データや教師データと呼ばれる)を大量に機械に与え、そこから機械に自ら学習させることで、賢いAIを生み出すというものだ。 しかし高度なAIを開発するには、その分上質で、大量のデータが必要になる。そしてデータは無尽蔵にあるわけではなく、いまその枯渇が叫ばれるようになってきている。たとえば2022年に発表された論文によれば、早ければ2026年にも、LLMと呼ばれる種類のAI(お馴染みChatGPTなどの生成AIに使われるAIだ)に必要なデータが使い果たされてしまうと予測されている。 こうした状況の中、ウクライナで日々生み出されているデータは、新たなAI学習用データの「油田」となり得るわけだ。さらにそこから得られるのは、戦場の最前線におけるリアルなデータであり、特に自律型の兵器を動かすためのAIにとって、最良の学習データになり得ると考えられている。 AIに膨大な量のドローンデータを学習させることで、そのAIはターゲットの識別方法から、地形への対処、最適な武器使用のタイミングに至るまで、貴重な「実戦経験」を積むことができる。訓練されたAIは将来的に、戦場での意思決定支援を担い、人間では追いつけない速度で膨大な情報を解析し、敵味方の位置関係を把握して、効果的な攻撃方法などをレコメンドするといった使い方が予想されている。またウクライナでは、「ドローンスウォーム(複数のドローンを統一的に制御する技術)」の開発・実戦投入も進めており、最大20機を同時運用することも可能なレベルに達しているとの報道がある。こうしたまったく新しい自律型兵器の運用が可能なAIを実現するためにも、ウクライナが持つデータが欠かせない。 ただ前述のロイターの報道によれば、「OCHI」システムは最初からAIの学習データを集めることを目的としていたわけではないそうだ。このシステムは、もともとは前線の指揮官が複数のドローン映像を同時に見ながら、戦局を俯瞰できるようにするためのものだった。しかし大量のデータを蓄積し続けるうちに、「AIの学習に使えるのではないか」という気づきが生まれた、というわけだ。現在では意図的に映像を保存し、将来的なAI開発に役立てる体制が整えられつつある。さらにウクライナが蓄積したドローンデータは、国際社会からも大きな注目を集めており、すでにいくつかの外国政府や企業がOCHIの技術やデータへ興味を示しているという。