ロシアと北朝鮮の「軍事条約」発効へ、批准手続き終了…東アジア安保に影響必至
【ソウル=依田和彩】朝鮮中央通信は12日、北朝鮮がロシアとの「包括的戦略パートナーシップ条約」を批准したと伝えた。ロシア側は批准手続きを終えており、批准書の交換により発効する。条約では有事の際の相互軍事支援を定めており、発効すれば、両国関係は事実上の軍事同盟に格上げされる。ロシアのウクライナ侵略だけでなく、東アジアの安全保障環境にも影響は必至だ。 【図】一目でわかるロシアと北朝鮮の軍事協力
同通信によると、北朝鮮の批准手続きは「国家元首」が11日に政令に署名し完了した。国家元首は金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記を指す。
ロシアでは9日、プーチン大統領の署名で、批准手続きが終わった。
条約は、6月に平壌(ピョンヤン)で行われた露朝首脳会談で署名された。計23条で構成され、効力は「無期限」としている。第4条では、露朝いずれかが武力侵攻を受けて戦争状態に陥った場合「保有するあらゆる手段で軍事的、その他の援助を提供する」などと定めている。
北朝鮮によるロシアへの兵士派遣は第4条を根拠にしているとの見方がある。
前文では「覇権主義的で一極的な世界秩序を押しつけようとする策動から国際正義を守る」との目標も掲げた。宇宙や原子力の分野での協力も確認しており、ロシアが北朝鮮の核・ミサイル開発を後押しする可能性を示唆している。
両国による批准手続きに先立ち、北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)外相が、モスクワでプーチン氏やセルゲイ・ラブロフ外相と相次いで会談した。条約についての調整が議題に上ったとみられ、ハイレベルでの批准書交換が行われるとの観測もある。
ロシアの前身であるソ連は北朝鮮と1961年に「友好協力相互援助条約」を締結し、当事者のいずれかが武力攻撃を受けて戦争になった場合、直ちに介入する義務を規定していた。条約はソ連崩壊(91年)後の96年に失効した。