米国景気に一喜一憂する日本株 最高値に向け経営者がすべきこと
9月4日の日経平均株価の終値は前日比1638円(4%)安の3万7047円と、今年に入って3番目の下げ幅となった。米国の景気悪化懸念が再燃し、米株安が波及したためだ。日本企業の業績は堅調であり、外部要因に大きく左右される展開となっている。 SMBC日興証券チーフ株式ストラテジストの安田光氏は株価の先行きについて「グローバルのマクロ環境次第だ」と指摘する。 日本株は米国経済の影響を受けやすい。米サプライマネジメント協会(ISM)が発表した8月の製造業景況感指数は市場予想を下回り、好不況の節目となる50を5カ月連続で下回った。8月の雇用統計は雇用者数の伸びが市場予想に届かなかったものの、失業率は7月から改善した。景気失速を避けながらインフレを抑え込むソフトランディング(軟着陸)は本当に実現するのか。米国の経済指標の結果に一喜一憂する局面が続く。 為替相場の動向にも注意が必要だ。8月下旬以降の円相場は1ドル=145円を上回る場面が増えている。本稿は米連邦公開市場委員会(FOMC)前に執筆している。米連邦準備理事会(FRB)が9月に利下げに転じれば、円高ドル安が進むだろう。トヨタ自動車など輸出関連企業は今期の想定為替レートを145円前後に設定しており、SMBC日興証券の安田氏は「1ドル=143円を超えると、今期は減益に転じる可能性がある」と話す。
総裁選の結果で円高リスクも
27日が開票日の自民党総裁選も外国為替相場を左右しそうだ。日銀は7月31日の金融政策決定会合で市場の予想に反して追加利上げを決めた。市場では行き過ぎた円安を是正したい政府の圧力があったとの見方が多い。大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリストは「アベノミクスを継承する高市早苗氏なら円安を容認するだろうが、石破茂、河野太郎、茂木敏充の3氏の場合は金融引き締めを日銀に求めるだろう」と円高リスクが高まるとみる。 外部要因で値動きが荒い日本株だが、堅調な業績といったファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は変わっていない。経営者がやるべきことは何か。大和証券の木野内氏は「ファクトリーオートメーション(FA)など省人化や生産能力を引き上げる積極投資が大事だ」と説く。米アップルは月内にiPhone16を発売。パソコンも7年ぶりに買い替えサイクルに入るため、半導体や電子・精密機器の在庫積み上げ時期に転じるとみる。 行き過ぎた円安下で輸出企業は業績を伸ばしたが、輸出数量は伸びず、国内の物価高と消費低迷を招いた。木野内氏は「国内生産の増加で輸出数量が伸びれば、貿易赤字が改善し、円高や国内経済の強化につながる」と話し、「来年の半ばには日経平均4万8000円もあり得る」とみる。 昨年来の日本株上昇の要因の一つが「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ改善」といった経営改革への期待だった。8月上旬の歴史的な株価急落の直後でもキヤノンや大和ハウス工業は自社株買いを発表し、資本効率改善への姿勢を示した。企業には逆風下でも稼ぐ力や資本コスト経営を愚直に磨き続けられるかが問われている。
阿曽村 雄太