青森でイカ・サバ激減――日本の海の異変、ひたひたと迫る「魚種交替」と「温暖化」
大きな環境の変化に直面し、八戸も対応に乗り出している。今年1月、八戸市の東北医療福祉事業協同組合(SGグループ)と、弘前大学地域戦略研究所(青森市)が共同でトラフグの陸上養殖試験を始めた。閉館した温泉施設を活用している。 長年、八戸で水産業に携わってきた八戸漁業指導協会の熊谷拓治会長は、厳しいながらも養殖に挑戦していくしかないと言う。 「養殖が盛んな北欧は波が安定した湾が多く、環境も適しているが、八戸は外海に面しており、波が高い。従って、あまり養殖の環境には向いていない。ただ、温暖化が収まるのを待っていると、みなやっていけなくなってしまう。イカは単価が安く神経質な生物だから養殖は難しいかもしれないが、ホタテなりカレイなり、ある程度魚価の高い魚種を選びながらやっていくしかないだろう。やはり、いかに減ったと言っても、八戸は魚の町だからだ」 激変する海の環境に八戸はどこまで対応していけるか。海の町の挑戦が始まっている。
------ 森健(もり・けん) ジャーナリスト。1968年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、総合誌の専属記者などを経て独立。『「つなみ」の子どもたち』で2012年に第43回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『小倉昌男 祈りと経営』で2015年に第22回小学館ノンフィクション大賞、2017年に第48回大宅壮一ノンフィクション賞、ビジネス書大賞2017審査員特別賞受賞。