メルセデス、終盤戦のアップグレード投入を断念する可能性を示唆。クラッシュによる修復費用がかさみ予算制限を懸念
メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウォルフは、メルセデスが今シーズンの終盤戦にアップグレードを持ち込む可能性が低いことを認め、その理由についてイタリアGP以降チームが大規模なクラッシュを立て続けに耐え抜いたせいだと語った。メルセデスは、夏休み前にW15を勝てるマシンに改良するため多額の投資を行ったことから、予算上限に非常に近づいた状況にある。 【写真】2024年F1第16戦イタリアGP アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)がFP1でクラッシュ ジョージ・ラッセルがFP2の開始時に激しいクラッシュを起こしたメキシコシティGPの後、ウォルフは最近のインシデントによるダメージの修復にかかった費用がチームの開発の進捗にどのような影響を与えたかを説明した。 「モンツァでのキミ(・アントネッリ)のクラッシュ、オースティンでのジョージのクラッシュ、そして今度はここでジョージのクラッシュがあった」 「コスト上限があるなかで、これは難しい状況だ。これら3回のクラッシュにより、我々は不利な立場に追い込まれたが、メキシコで発生したクラッシュは特に大きかった。完全に新しいシャシーを用意しなければならず、それがコスト上限にとって大きな打撃となったので、マシンに搭載するものを減らさなければならない可能性がある。ブラジルではふたつのアップグレードパッケージ、ふたつのフロアを用意する予定だが、基本的にそれ以外のものを投入する予定はない……」 その後ウォルフは、チームが今シーズンの最後の3つのグランプリに新パーツを持ち込む計画をすべて棚上げし、来年のW16のためにそれらの開発を残しておくことを明らかにした。 「パーツには一定の制限があり、これをどのように管理するか創造的になる必要がある。影響があるのは確かだ。開発部品をどれだけマシンに搭載できるかという点に影響が出るが、なぜなら年末まで答えはゼロだからだ」 非常に恐縮したラッセルは、自身のミスについて次のように認めた。 「この2週間、スペアパーツが不足してチームに多大なプレッシャーをかけてしまった。本当に余計なことだった。でも、僕たちはなぜそれが起きているのかよくわかっていない。それはオーバードライブによるものではない。単にマシンが路面を捉えたからだ」 しかしラッセルは、「予算上限については心配していない。なぜなら、僕たちは常にいくらかの余裕を持っているし、今シーズンに投入するものと来シーズンに投入するものを常に比較検討しているからだ」と確信しており、次のように認めた。 「今シーズンの残りでは妥協しなければならないかもしれないが、僕はおそらくそれに賛成するだろう。なぜなら、僕たちはタイトルを争っているわけではないからだ。来年に向けてよりよいチャンスが得られるなら、喜んで古いフロアを使い続けるよ。被害は当初予想していたほどひどくないので、オースティンのフロアの修理はできると思うし、ブラジルで使えるはずだ」 予算制限の懸念は、ハミルトンがグリッド最後尾から、ラッセルがピットレーンからスタートしたアメリカGPのレースで、メルセデスが中古のパワーユニットをマシンに搭載することを選択した理由でもある。2基の新しいユニットをマシンに搭載すれば、パフォーマンス上の利点が得られることは明らかだ。使用期間は通常の8回ではなくあと6回のグランプリということになるので、はるかに激しくプッシュできる可能性があった。しかし、チームは2基の新しいパワーユニットを使用することで最終決算に影響が出ることを懸念し、それを断念した。このことは、メルセデスが予算上限を管理するにあたって危うい道を進んでいることを明確に示している。 [オートスポーツweb 2024年11月01日]