「23分短縮」の成果も 救急車両からドクターに心電図をいち早く届ける新システムを導入 救命率向上を目指す【宮崎発】
日本人の死因で、がんに次いで多いのが「心臓病」だ。発症から治療までの時間が命を左右する急性心筋梗塞。少しでも多くの命を救おうと、宮崎市の救急医療現場では、患者を搬送する段階で心電図を医師と共有できる新たなシステムが導入されている。 【画像】新システム導入で、病院搬送から治療終了まで23分も短縮
突然死の原因として最多「急性心筋梗塞」
厚生労働省の人口動態統計によると2023年、宮崎県内では心臓病で2615人が亡くなっている。 中でも、血管が詰まることで心臓の筋肉に血液が届かなくなる急性心筋梗塞は、突然死の原因として最も多い病気と言われている。 宮崎市郡医師会病院 柴田剛徳副院長: 血管が詰まって筋肉が壊死(えし)していくと、突然死の原因になったり、心臓が破れたりする。2~3時間で再灌流(かんりゅう)してあげれば筋肉がかなり助かるので、とにかく早く診断することがとても大事。 急性心筋梗塞の患者受け入れ数で国内トップ10に入る宮崎市郡医師会病院の心臓病センターでは、専門医約30人、看護師などのメディカルスタッフ約150人が在籍し、24時間365日体制で救急患者を受け入れている。
救急車両から心電図をドクターへ
2021年に、この病院に導入されたのが「12誘導心電図伝送システム」だ。 119番通報を受けた救急隊員が、救急車両の中でとった患者の心電図を、離れた場所にいる専門の医師に共有できるシステムだ。 高松誠医師: どの端末にもこのシステムが入っていますので、それを使って診る。モバイル端末の中にもシステムが入っているので、モバイルでも診ることができる。 これまでも同様の心電図伝送システムがあったものの、以前のシステムは「心電図の画質が悪い」「伝送時間がかかる」などの課題があり、救急隊員が患者の症状などを電話で伝えて、受け入れ先の病院を探すのが一般的だった。
カテーテル治療は23分短縮
新しいシステムを使うことで、症状の判断が難しい場合でも、早い段階で専門医が心電図を確認できるため、患者が病院に到着する前に必要なスタッフを集め、治療態勢を整えることができるようになった。 宮崎市郡医師会病院 柴田剛徳副院長: 患者が来られることがわかれば、夜間でもドクターを4~5名呼び出すことが可能。患者さんが到着する前に、血管造影室の準備も整っているので、すべてが非常に早く病院の中で対応できる。1分でも2分でも早く治療が完結できるということになれば、これを継続することで、救命率もより上がっていくと考えている。 このシステムを使って、2023年3月から2024年2月までに宮崎市郡医師会病院に心電図が伝送された件数は65件で、前の年の1.7倍に。患者が病院に搬送されてからカテーテル治療が終わるまでの時間は、システム導入時に比べ23分短縮された。