「礼儀やマナーに気を使わない外国人旅行者が増えた」その結果…「京都は私の“Home”」と語るベルギー人女性が見た変化と憂い
礼儀やマナーに気を遣わない外国人旅行者が多くなった印象
バネッサさんはベルギーのブリュッセル出身。旅行者として初めて来日したのは、2015年8月のことだった。 「京都を訪れたとき、2週間滞在しました。地図をもたず、気ままに寺院や町並みを散策していました。京都の寺院や庭園の静寂さは、私に深く響きました。自然を眺めながら何時間も座っていられたのです」 当時は日本語をあまり話せなかったバネッサさん。それでも京都で見るもの触れるもの、すべてを「まるでパズルのピースがピタッとはまるような感覚で理解できた」という。 「自分を見つけたように、自分がいるべき場所を見つけたのです」 日本での旅を終えて帰国したバネッサさんは、自分が内面から変わったように感じていた。すでにヨガや指圧を学んでベルギーで教室を開いていたバネッサさんの変化は、教え子にも伝わったようだった。 「友人や生徒からも、声色が変わったといわれました」 バネッサさんの心は、深い安らぎに満ちていたともいう。 京都の魅力に取りつかれたバネッサさんは、その後も日本を訪れること計8回。京都に居心地の良さを感じるとともに、京都の街が自分と一体になったような感覚を覚えていったそうだ。そして、京都へ移住する決心を固める。 ベルギーで営んでいたヨガ教室を閉め、住んでいた家を引き払い、家財道具を処分し、旅行ではなく「住むため」に京都の地を踏んだのは2018年12月だった。 「英語には『家は心が帰る場所』という言葉があります。私の心は京都にありました。だから京都は、私のHomeすなわち『家』なのです」 それまで旅行で京都を訪れていたバネッサさんが、実際に住んでみて気づいた京都ならではの問題があるという。 「京都の経済にとって観光業は欠かせませんが、最初に訪れたときと比べたら、今はオーバーツーリズムの問題に直面しています。バスが混雑しすぎて、京都に住んでいる人が乗れない。レストランも予約が取れない。そして人だかりなどもあります」 また、バネッサさんから見て、最近の外国人旅行者の多くが、礼儀やマナーに気を遣わなくなっていると感じることがあるそうだ。 「以前は、本当に日本に興味をもって訪れる外国人観光客が多く、訪れる前に日本の礼儀作法や日本人を尊重することについて学んでいたように思います。しかし最近では、そうしたことにあまり気を遣わなくなってきた観光客が増えています」 その結果、京都の一部では「おもてなし」の文化が失われつつあるように感じるのが悲しいという。 「日本の人たちは、旅行で訪れている外国人と京都に住んでいる外国人の見分けがつきません。在住者としては、外国人全体のイメージを悪くしないよう、完璧な振る舞いや十分な敬意を示すことにプレッシャーを感じることがあります」 これは我々日本人にも当てはまりそうだ。海外に住む日本人の印象を落とさないよう、海外旅行をする際には自らを律する配慮が要るだろう。