「ロシア人の4割は戦争に反対だ」それでも反対意見を封殺する「恐怖・貧困・プロパガンダ」によるプーチンの統治システム
〝高尚〟なテーマに目を向ける余裕などない
なぜ多くのロシア人が今でもプーチン氏を支持しているのか。それは、簡単に言えば、恐怖とプロパガンダ、そして貧困です。これらは、プーチン氏が精密に構築した、国家管理のシステムだと言えるでしょう。 貧困層は普通、十分な教育を受けていないから、彼らのような選挙民を管理するのは簡単なことです。プーチン氏は、大多数の人々が政治に興味を持たないように仕向けました。つまり、政治や経済といった、〝高尚〟なテーマに目を向ける前に、彼らは自分の問題に目を向けなくてはいけない。人々が心配しているのは、自分自身を今日、どうやって養うかであって、国の未来をいかに良くするか、ということではないのです。 ここでいう〝人々〟というのは、小さな町や村、農村の選挙民のことを指しています。ロシア人の大多数は、このような環境に住んでいるからです。モスクワやサンクトペテルブルクといった大都市では、人々はより良い生活をして、ほかの人々よりは教育を受けているので、プーチン氏の政策への支持はいくらか低い。 ただ、ロシア人の100人中、99人は海外に行ったことがありません。だから、テレビで言われていることをすべて信じています。つまり、すべての困難な事象が起きているのはプーチン氏が悪いからではなく、アメリカやヨーロッパが邪魔をしているからだと考えているのです。 そのような典型的なロシア人は、アメリカの影響のせいで生活が悪いと思い込み、月に3万ルーブル(約4万9000円)程度の給料のうち半分を公共料金と家賃、そして残りを食べ物とウォッカに費やしています。ロシアで、アルコールの価格が安いのは偶然ではないのです。国は実は、税額を使い、極めて注意深くコントロールしています。つまり、ロシア人の典型的な男性はウォッカを買いに行き、酔っぱらって週末を過ごし、そして週明けには町で唯一の職場である、工場にいく。そして工場で働く人々は、プーチン氏に投票しなくてはならないのです。もしそうしなければ、解雇されるか、給与を剝奪されます。だから、これらのロシア人は言われたとおりにしなければならず、さもなければ、生活することができなくなるのです。 これに加えて、市民として自由に不満を表明すれば、それは即座に強制的な抑圧の対象になりかねません。内務省や検察などの治安機関には、法の執行と正義を確保するためだけでなく、プーチン氏の権力を保証するために、途方もない額の予算が割り当てられているからです」