神村学園イレブン

　奈良県のナラディーアで行われている「ECLOGA 2024 IN ナラディーア」は8月16日、最終日を迎えて、順位決定戦が行われた。Aグループ3位の神村学園vsBグループ3位の奈良クラブによる5.6位決定戦は、3-1で神村学園が勝利した。 【フォトギャラリー】神村学園 vs 奈良クラブユース 　グループリーグを2連敗して、最終日を迎えたグループ3位同士の対戦。大会を勝利で終わりたい両チームの意地がぶつかり合う展開となった。 　前半立ち上がりからペースを握ったのは今夏の総体準優勝の神村学園。DFラインからボールを繋いでくる奈良クラブユースに対し、前線からハイプレスで圧力をかけながら得点機会を窺う。スコアが動いたのは前半10分。奈良クラブユースのボール回しの綻びを見逃さずに奪ったボールを、MF松下永遠（3年）が運び、直接ゴールに蹴り込んだ。今大会はエースのFW名和田我空(3年)をはじめ、FW日高元（2年）やFW金城蓮央（3年）など前線のタレントが不在。そんな中、「左右に散らして、中が空いてくるところに（FWとの）ワンツーで入っていったり、外からのミドルシュートを狙いたい」と話していた松下が中盤から飛び出し、スコアを動かした。 　先制点をあげても圧力を弱めない神村学園は、奈良クラブのビルドアップの隙を狙い、度々ゴールに迫っていく。追加点が入ったのは19分、FW徳村楓大(2年)の右足から、左サイドでボールを受けたスピードスターは、ドリブルを開始。ペナルティエリアの外をかすめるようにカットインし、相手DFを振り切ったところで右足を一閃。総体で得点ランキング3位タイの4得点をあげた徳村の追加点で、リードを2点とした。 　奈良クラブユースは、先月の第48回日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会に初出場。2020年設立の新興勢力ながら、スペイン人のダリオ・ロドリゲス監督の下、チーム力を高めている。この試合も2点を追う展開となったが、来季のトップ昇格が内定しているエースのMF川井大地（3年）を中心に、あくまでつなぐ姿勢を崩さない。しかし神村学園のDF陣の集中力高い守備の前にゴールへの糸口を掴めず、逆に前半終了間際の39分には、FKからFW樹本琉空（2年）に追加点を許してしまう。 　神村学園が3点リードで迎えた後半。前半は神村学園の前線からのプレスに押し込まれる形となった奈良クラブユース。トップチームへの練習参加も豊富な川井だが、「トップとはまた違う『強さ』を感じました。全国（日本クラブユース）でもそこで苦戦した」と、強豪チームとの違いを口にした。それでも、後半に入り、徐々に強度に慣れてきた奈良クラブユースが押し込む時間が増えていく。 　ゴールをこじ開けたのは後半28分。右サイドの崩しから、最後は中盤で体を張り続けていたMF林克俊（3年）が押し込んだ。キャプテンマークを巻く林の、魂を感じるゴールで、奈良クラブユースの攻撃は活性化。終了間際には、特別指定としてJ3リーグでのプレー経験もあるFW関口智也（2年）がスルーパスに反応。ゴールキーパーを交わしたものの、ここは神村学園のDF新垣陽盛（3年）がカバーして、それ以上の失点は許さなかった。そのまま神村学園が前半のリードを守り切り、3-1で勝利。マンオブザマッチには、決定的な1点を防ぎ、チームを統率した新垣が選ばれた。 　勝利したものの、シュートを何本も放ちながら後半は無得点と、攻撃面で課題を見せた神村学園。試合後には「前線のメンバーが怪我などで離脱している中で、フィニッシュの精度など、そこで負けている部分はあるので、残念だったところはあります」と語った有村圭一郎監督。1ゴールをあげた松下も「ゴールに向かっていくところだったり、外からシュートを狙うだったりは課題なのかなと思う」と、前線のタレント不在時の迫力不足を痛感していた。 　反省の一方で「ビルドアップはインターハイ通して自信がついてきた」と松下。中盤でコンビを組むMF鈴木悠仁(3年)も欠場の中、「リーダーシップのあるガク（名和田）だったりチカト（鈴木）がいないので、彼らが帰ってきた時に『何かチームが変わっているぞ』と風に思わせたい」とリーダーシップも発揮し、積極的にチームを引っ張った。 　有村監督は1勝2敗で終わった今大会について、「ゴールに向かう部分は、ちょっとずつイメージの共有は出来てきているし、収穫はあった。総体で悔しい思いをしたというのは、本人たちが一番言っていることなので、土台作りをやり直して今後のプレミアと選手権にいい形で結果が残るようにやっていきたいと思います」と、手ごたえを口に、会場を後にした。 　また「個人的には全然やれると思ったし、強度に慣れてくれば、チームとして上手く前進できたところもあった」と振り返ったのは奈良クラブユースの川井。静岡学園、昌平、神村学園という高体連の強豪との3連戦を経験し、目標と語るプリンスリーグ2部昇格へ、こちらも収穫の多い大会となったようだ。