札幌ドームの赤字は本当に「日ハム移転のせい」だったのか…いま不振に陥っている「真の理由」
ドーム赤字はファイターズ移転のせい?
札幌ドームはネーミングライツ(命名権)契約を得て、2024年7月に「大和ハウスプレミストドーム」に改称した。しかし2023年には年間6.5億円の赤字を出すなど経営は苦しく、「4年間10億円」と報じられる契約金額をもってしても、赤字解消には程遠い。 【写真】全米も驚愕!大谷翔平の妻・真美子さん「衝撃のドレス姿」 不振に陥った原因は、2022年をもってプロ野球「北海道日本ハムファイターズ」が新球場に移転、「使用料は年間13億円、諸経費込みで20億円」という収入が得られなくなったから、という報道をよく見かける。あまりの赤字から「いずれ札幌市の税金で赤字を賄うことになるのでは?」という声も聞かれるが、本当にそうなのだろうか? 実態は、決してそうではない。札幌ドームの所有者は札幌市であり、いまも「建設費用を賄った市債の償還・利息」「管理保全」などで、年間20億円以上が税金から拠出されている。かつ、減収を1万~2万人規模のコンサート誘致で補おうとして開始した「新モード」改装費用10億円も、もちろん市からの拠出。運営会社の損益計算書(バランスシート)では見えない支出を、すでに余儀なくされているのだ。 スポーツ用のスタジアムは、概して建設費・維持費がかかり、投資を回収できない“ハコモノ”扱いを受けることも多い。537億円という費用を投じて建設された「大和ハウスプレミストドーム」(札幌ドーム)は、このまま赤字体質から脱却できないのか? まずは札幌と同様に、「自治体が保有・実質的に運営」というスキーム(枠組み)であった「京セラドーム大阪」(開業時は「大阪ドーム」)の経営悪化、再建までの道のりをたどってみよう。「大和ハウスプレミストドーム」(札幌ドーム)で、再建の参考にできないだろうか?
札幌ドームのほうが余程マシだった?
大阪ドームは、大阪市が主体となって建設され、696億円を投じて完成した後は、市が主体の第三セクター会社「株式会社大阪シティドーム」が運営を行った。大阪ドームは「大阪市主体の3セク+民間(大阪ガス、ダイキン工業など)」、札幌ドームは「札幌市主体の3セク+民間(北海道銀行、北海道電力など)」。ここまでは大阪、札幌ともに、ほぼ同様だ。 しかし大阪ドームには、球場とセットで商業施設「パドゥ」「グリンドムモール」遊園地「シムランドQ」、巨大な立体駐車場などが整備されていた。試合がない日でも賑わいを生めるという発想は、札幌ドームを出て行ったファイターズの新本拠地「エスコンフィールドHOKKAIDO」に近い。 ただ大阪ドームの場合は、バブル期に建てられた経営計画が、全方向できわめて甘かった。まず、この球場に本拠地を移したプロ野球「大阪近鉄バファローズ」(現在の「オリックスバファローズ」源流のひとつ)は元より極度の資金難に苦しんでおり、実質自前の藤井寺球場から「使用料年間10億円」のドームに移転したことで、球団としてさらなる赤字に苦しむことになる。 経営面で見ても黒字が出たのは開業初年度(1997年)のみで、重すぎた使用料負担は、2004年に「大阪近鉄バファローズ」が球団ごと消滅する引き金となった。 住宅地が近いことからコンサート・ライブの誘致もことごとく不調に終わり、周辺の商業施設も相当数のテナントが早々に退去、あたりは「営業中の廃墟」と化した。球場と商業施設の一体開発とはいうものの、エスコンフィールドと違って無計画に誘致していたため、全体的な集客力は壊滅状態。「まったく魅力がなかった」としか言いようがない。 大阪ドームの実績は、開業当初の年間目標「来場者数600万人」「稼働日数300日」の5~6割程度で推移。単年でも収益化の見込みが立たず、バファローズが北川博敏選手の「9回裏逆転サヨナラ・優勝決定満塁ホームラン」でリーグ優勝を果たした2001年ですら「売上69.6億円(前年より8.6億円の増益)、赤字は23,2億円」という体たらくであった。 ここまでは、「プロ野球+サッカー+ライブ誘致好調」という札幌ドームのほうが、よほど順調に経営できている。