再び「1ドル=160円」に向かうのか?ここからのドル円相場をみる【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】
チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)が解説します。
●介入観測や米CPIでドル安・円高に振れたものの、米金融当局者発言などで再びドル高・円安に。 ●円安の一巡にはやはり明確な米雇用と物価の伸び鈍化、利下げ期待によるドル高の一服が必要。 ●介入警戒のなか当面円安は継続、米国9月利下げと日本10月利上げでも年末は153円程度。
介入観測や米CPIでドル安・円高に振れたものの、米金融当局者発言などで再びドル高・円安に
ドル円は4月29日に一時1ドル=160円17銭水準をつけたあと、政府・日銀によるドル売り・円買い介入とみられる動きを受け、5月3日には151円86銭水準までドル安・円高が進みました。その後ドル円は、5月14日にいったん156円74銭付近まで戻りましたが、翌15日発表の4月米消費者物価指数(CPI)がインフレ懸念を和らげる内容となったことでドル売り・円買いが優勢となり、16日には153円60銭近くに達しました。 ただ、CPI発表後、(1)複数の米金融当局者から利下げは急がない旨の発言が相次いだこと、(2)米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨(4月30日、5月1日開催分)で追加利上げの議論がみられたこと、(3)米経済指標で景気の底堅さが確認されたこと(図表1)で、再びドル買い・円売りの流れに転じました。その結果、CPI後のドル安・円高の値幅は完全に埋め戻され、ドル円はここ数日、157円前後で推移しています。
円安の一巡にはやはり明確な米雇用と物価の伸び鈍化、利下げ期待によるドル高の一服が必要
この先のドル円相場の方向性について、再び160円台乗せを試す展開となるのか、あるいは、ドル高・円安の動きがそろそろ一巡するのか、以下、考察してみます。足元のドル高・円安は、主に「ドル高」によるもので、米国の雇用の底堅さとインフレの粘着性を背景とする利下げ期待の後退に起因するとみています。実際、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が予想する年内の米利下げ回数は、年明け以降減少が続いています(図表2)。 そして、米ドルは昨年末から昨日まで、主要33通貨のうち26通貨に対し上昇し、日本円は主要33通貨全てに対し下落しています。このような状況において、ドル高・円安が一巡するには、やはり米国で雇用と物価の伸びが明確に鈍化し、利下げ期待が強まることが必要と思われます。日本における金融緩和の修正は円高要因ですが、日銀は慎重な舵取りをする見通しで、ドル高・円安の一巡には米国の要素がより強く作用すると考えます。
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