「まじめにやったところで邪魔しか入らない」京アニ事件、青葉被告の軌跡(前編)
▽執筆に没頭 「ハルヒ」と出会ったのはそのころで、母親から週に2、3千円の現金や食料品の支援を受けながら、小説を書くようになったという。「ハルヒ」の影響からか、書いていたストーリーは「女子高生がキャピキャピするもの」だと母親に明かしている。人と関わらず身を立てられるかもしれないと、ライトノベル作家を目指して執筆にのめり込んでいった。 その一方で、申し込んだ福島原発の仕事を断られ、金銭的に苦しくなって自殺を考えるほど追い詰められた。そんな中、ネット掲示板上で恋愛感情を抱いていた相手から「レイプ魔」と言われたのをきっかけに、部屋の窓ガラスを割り、パソコンを破壊した。そして2012年6月に茨城県内のコンビニに押し入り、包丁を店員に突きつけ、2万1千円を強奪した。34歳のときだった。 何が犯行に駆り立てたのか。青葉被告は、当時働いていた郵便配達のアルバイトを辞めたばかりで、兄が前科を職場に漏らしたと思い込んだという。被告は「まじめにやったところで邪魔しか入らない」と激怒した記憶を語る。その時点で無差別殺人を考えたが、心の中でブレーキをかけた。その理由について「小説にどこか思いがあった。希望になる。最後のつっかえ棒だったと思います」と述べた。
3年6月の実刑判決を受けた。何かと関わりや支援を続けてきた母親と兄妹は「もう、これ以上は無理」と心が折れてしまい、以降は連絡を取らなかった。2度目の事件の公判には身内は誰一人傍聴に来なかった。青葉被告は天涯孤独に陥った。 (後編につづく)