家の猫の話 Vol.1
過去2度にわたり、月一限定コラムコーナー「タウントーク」にて連載した、ピエール瀧さんによる『家の猫の話。』が新連載としてリニューアルスタート! 家の猫の話
コンブが我が家にやってきた時、彼はまだ小さな子猫で、しかもアズキという同じく黒猫の妹猫(多分)と一緒でした。
このアズキ、とても人懐っこい猫で、特にオイラにとても懐いてくれました。 なぜかキャベツの千切りやほうれん草のお浸しといった青い野菜が好物で、オイラが食事をしていると、「あのシャキシャキしたやつをちょいと分けてもらえませんかね。ていうか早く頂戴」と、オイラの太ももに前足の爪を食い込ませて分け前を催促したりするのでした。なんと可愛いことよ。
そんなアズキですが、ある日突然我が家から姿を消してしまいます。
当時リビングにあったソファーを新しいやつに買い替えることになり、搬入業者が古いソファーと新しいソファーを入れ替えにやってきました。 オイラは業者の人に「ウチには猫がいるので玄関のドアを開け放しにして作業しないでください」とお願いをして、作業の行方を所在なく見守っていました。コンブはビビりなので、知らない人を警戒し、さっさと上階の洗面所の下に潜り込んで怯えながら時が過ぎ去るのを待っていました。
業者が悪戦苦闘しながら古いソファーを家の外に運び出し終わり、ようやくソファーを道端に置いたその瞬間、突然ソファーの中から黒い影が飛び出してプロック塀の向こうに消えて行きました。その影がなんとアズキだったのです。
アズキは知らないおじさん達が家の中に入ってきた事に警戒心を抱き、ソファーの下部分からソファー内部に潜り込んで息を潜めていたのです。ソファーを運び出している間、業者のおじさんもオイラも中に猫が入ってるとは夢にも思っていませんでした。
オイラは「あっ!」という声と共に玄関を飛び出してプロック塀に駆け寄りましたが、そこにはもうすでにアズキの姿はありませんでした。痛恨。