反発する原油価格 安定的上昇が続いた場合、世界経済への影響はどうなる?
いまだに残るシェールブーム時の過剰投資の影響
一方で、残念ながら原油価格反発によるプラスの効果も限定的と考えられます。今回の原油価格下落は米国内での供給過剰が一因との見方が支配的ですが、それはシェールブームに沸いた過去の過剰投資の結果と換言することができます。 米製造業の景況感を表すISM製造業景況指数が(原油安が始まった)14年後半から悪化基調に転じているのは、原油産業と製造業の関係が一般に理解されていたよりも強かったことを物語っているのでしょう。こうした見方に基づけば、原油価格が元の水準に戻ったとしても、米国内には余剰な生産能力が存在するため、新規のシェール開発が活況を取り戻すとは考えにくく、それを背景に成長を続けてきた米製造業の不振はしばらく続くと考えられます。 その余剰生産能力は、鉱業関連産業(鉱工業生産統計のSuport activities for Mining)の設備稼働率低下が代弁しています。目下の稼働率は26.0%と空前の低水準で、これはシェール・ブーム前の00-07年の平均である81.7%を大きく下回っています。言わば、開店休業状態です。このように製造業とエネルギーセクター内に余剰生産能力が残存している限り、原油価格の反発が直ちに製造業の回復につながるとは考えにくいです。
稼働リグ4基増加は原油価格の弱気材料に
そうしたなか、3日に油田サービス大手企業であるベーカー・ヒューズ社から発表された稼動リグ数は408と前週から4基増加しました。15年8月以降、初めての増加で足もとの原油価格回復を受けて、一部のエネルギー企業が操業を開始(再開)を判断したとみられます。 当然のことながら、稼動リグ数の増加は原油の増産につながるため、原油の弱気材料です。また、上述したとおり、足もとの原油在庫は空前の高水準付近にあり、このタイミングでの増産は原油在庫のさらなる(意図せざる)積み上がりを招く可能性があるでしょう。現実的には、ハイ・イールド債の下落(低格付け企業が発行する高利回りの社債でエネルギー企業が多く含まれている)、銀行貸出態度の厳格化(FRBが実施しているシニア・ローン・オフィサー・サーベイという調査結果)が反映しているとおり、エネルギー企業は資金繰りに窮しているため、稼動リグ数が持続的に増加する可能性は低いでしょうが、向こう数週間はこの統計を注視する必要があります。