三菱さん、日本でこのHEVを売ってください!エクスパンダーHEVから考えるASEAN戦略
三菱自動車(以下MMC)はタイ現地法人・MMTh(ミツビシ・モーターズ・タイランド)で「エクスパンダー」「エクスパンダークロス」のHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)仕様を生産開始した。26日にバンコク・モーターショーにて実車を世界初公開、同車がMMThのレムチャバン工場製であることを明らかにした。MMCがHEVを海外生産するのは今回が初めてだが、現車を見て思ったことは「これは日本でも売れるのではないか!」だった。 TEXT & PHOTO:牧野茂雄(MAKINO Shigeo)
ASEANにHEV生産を定着させる=三菱の決断
エクスパンダーはMMCが2017年にインドネシア国際オートショーで発表され同年にインドネシアのMMKI(ミツビシ・モータース・クラマ・ユダ・インドネシア)で生産が開始されたMPVだ。2020年にはベトナムおよびマレーシアでKD(ノックダウン=部品・ユニットを梱包して出荷し、仕向け先で組み立てる方法)生産を開始した。 エクスパンダークロスは2019年に追加されたモデルで、車体地上高を20mm上げホイールアーチモールディングを追加し全幅50mm拡大したSUV的仕上げの仕様である。 エクスパンダー/エクスパンダークロスともに2021年にマイナーチェンジされ、外観デザインなどが変更された。そして今回はHEVが追加された。この仕様は当面、タイのMMThだけで生産される。HEVシステムはMMCが開発し「アウトランダー」「エクリプスクロス」に搭載しているPHEV(プラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)用駆動系をベースにしている。 ICE(内燃機関)をアウトランダーの2.4L直4からアトキンソンサイクル1.6L直4に変更し、発電機と駆動用電気モーターはPHEVから流用、駆動用車載電池はBEV(バッテリー・エレクトリック・ビークル)走行距離を長く確保するPHEVよりも大幅に減らし、必要な電動アシストとコスト、重量のバランスを取った。詳細はあらためて報告する。 走行モードは(1)電気モーター単独走行=BEV(2)基本ICE走行+電気モーター・アシスト=HEV(3)ICE発電と車載電池の電力を使った電気モーター走行=シリーズHEV(4)減速回生--の4パターンだ。どの走行モードでも(4)は行なわれ、電気モーターの効率が悪くなる高速走行時は(2)、登坂時や加速時など大トルクが必要なときは(3)を使う。 タイ現地での車両価格は94万6000バーツ。1バーツ=4.16円で計算すると為替レート上では約393万5000円になるが、物価水準で考えると「バーツ×10=日本円」が妥当だろう。つまり946万円。とても高い買い物だ。タイでの新車購入層は全人口の15%程度と言われる。 2023年のタイ国内新車販売台数は約77万台で前年比9%減。生産は184万台、同2%減。タイは国内消費よりも輸出が多い自動車輸出国であり、その台数はASEAN(アセアン=東南アジア諸国連合=タイ/フィリピン/マレーシア/インドネシア/シンガポール/ブルネイ/ベトナム/ラオス/ミャンマー/カンボジアの10カ国)加盟国のなかでは最大だ。 この事実から勝手に推測すると、MMCがMMTh製のエクスパンダークロスHEVを日本に輸出するのはまったく自然なことだ。PUT(ピックアップ・トラック)「トライトン」は日本に輸出している。かつてはホンダが「フィット・アリア」を日本へ出荷していた。