カマラ・ハリスはなぜZ世代を落胆させた? 女性政治家が「ガラスの天井」を打ち破るために“重要なこと”
こうした世論やクリントンの失敗も影響しているのかもしれない。選挙戦でハリスは、女性であることを強調してこなかった。それどころか、女性=軟弱というイメージを払拭しようとするかのように、タフさを打ち出し、「最高司令官として、私はアメリカが常に、世界最強かつ最も致命的な戦闘力を持つことを確実にする」と強調してきた。1年間で4万を超える犠牲者が出ているパレスチナ自治区ガザでのイスラエルの軍事行動についても、イスラエルの「自衛」として強く支持し、軍事支援を惜しまない方針を打ち出している。この点ではハリスはトランプとまったく変わりはない。
Z世代を落胆させた理由
今後、ハリスは勝利を追求する中で、歴代の男性大統領とほとんど同じような考えを持ち、同じような政策を遂行する女性政治家へと変貌していくかもしれない。その兆しは至るところにある。上院議員時代にはラディカルな気候危機対策を掲げ、フラッキングと呼ばれる環境負荷が高い天然ガスの採掘方法にも反対していたハリスだが、選挙戦では一転、フラッキング容認を打ち出し、気候危機を自分ごととして考えるZ世代を落胆させてきた。女性大統領の誕生は、それだけでアメリカを変えるわけではない。そのことによって新しい考えや価値観が政治外交に持ち込まれるからこそ意義がある。 ハリスに続く女性政治家が現れるかという問いは大事だが、同等、あるいはそれ以上に、ハリスや彼女に続く女性政治家がアメリカの政治社会に変革をもたらせるかどうかという問いが重要なのである。 ◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『 文藝春秋オピニオン 2025年の論点100 』に掲載されています。
三牧 聖子/ノンフィクション出版