予定調和をぶっ壊す『戦隊大失格』をレビュー&考察 『鬼滅の刃』や『ジョーカー』との意外な共通点とは? “バーンアウト”と“階級社会”に抗うヒントがここに…!?
大ヒットラブコメ『五等分の花嫁』で知られる漫画家・春場ねぎ氏によって描かれ、現在週刊少年マガジンで連載中の戦隊アクション漫画『戦隊大失格』。春アニメとして登場すると、その予測不能な物語に多くのアニメファンが魅了され、今注目の1作となっています。 【画像】『戦隊大失格』アニメと原作は全然違う? 原作漫画とアニメの絵柄を見比べてみる 戦隊ものをパロディとして扱いつつ、主人公が怪人側の戦闘員Dという下っ端。ヒーローではなく怪人、幹部ではなく下っ端という一風変わった設定で進行していく物語です。今回はそんな予定調和をぶっ壊していくTVアニメ『戦隊大失格』の魅力を考えます。
『戦隊大失格』のレビュー&考察:怪人とドラゴンキーパーの関係から見える「階級問題」
『戦隊大失格』が興味深いのは、悪の軍団「怪人」と人類を守る「竜神戦隊ドラゴンキーパー」との戦いは13年前にすでに終わっていて、今行われている戦いは茶番劇であるという設定です。物語開始時点で悪の軍団の幹部はすでに壊滅状態。ドラゴンキーパーは残された下っ端怪人たちに秘密の協定を持ち掛けます。 協定の内容は、怪人たちの命が保証される代わりに「毎週末、地上侵攻し敗れ散る」というもの。怪人たちは、通称「日曜決戦」と呼ばれるヒーローショーの悪役(やられ役)を担わされてしまったのです。屈辱的な協定ですが、ドラゴンキーパーたちに都合よく使われ、搾取される日々を繰り返す中で、怪人たちはいつの間にかそれに慣れ切ってしまいます。 主人公の戦闘員Dはそんな負けっぱなしの人生は嫌だと抵抗するのですが、他の戦闘員は聞く耳を持ちません。毎週戦いから戻ると、みんなでラジオを聴いたり○×ゲームをしたりと余暇を過ごして、戦う気力がすっかり奪われてしまっているのです。 搾取される側の彼らが諦めムードに包まれ、終わらない日常にハマっている様子を見ると、何やら他人事ではないような妙なリアリティーを感じてしまうところがあります。 そう感じてしまうのは、ドラゴンキーパーと怪人たちの関係性が、戦勝国と敗戦国、持てる者と持たざる者、大企業と下請け企業、ホワイトカラーとエッセンシャルワーカー、先進国と発展途上国など、現実に存在する抗いがたい格差、そしてその格差を埋めることの難しさとつながる部分があるからなのかもしれません。こうした階級移動の難しさは日本を含め現在世界中で見られる現象でもあります。
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