戦前の屋台が発祥とされる「京都ラーメン」…全国から人やモノが集まる土地で、独自の文化育む
濃口しょうゆ、鶏ガラしょうゆ、鶏白湯…
にしんそば、ハモの湯引きにおばんざい――。数ある京都の食文化に引けを取らない人気を誇る「京都ラーメン」。単に「京都」とひとくくりにされるものの、味の決め手になるスープは様々。全国各地から人やモノが集まる土地で、さまざまなニーズに応えるようにして、独自のラーメン文化が育まれてきた。 京都ラーメンは戦前に始まった屋台が発祥とされる。京都市内には「新福菜館」や「本家第一旭」など有名店がひしめく。スープは「濃口しょうゆ」「鶏ガラしょうゆ」「鶏白湯」。この3種類を中心に個人店やチェーン店がしのぎを削り、近年は他のジャンルも人気を集めている。
こうした多種多様なラーメンに合わせ、1931年創業の製麺所「麺屋棣鄂」(京都市南区)の3代目・知見芳典社長(52)は、オーダーメイドの麺作りに注力。ラーメン店の生き残りの厳しさを踏まえて顧客開拓に取り組んできた。 さらに、関東から流入したつけ麺の流行などを好機と捉え、約20年前の社長就任時はわずか2種類だった麺を300種類以上に拡大。市民の1割が全国から集う学生という京都ならではの背景もあり、「関西でなじみの薄かったつけ麺が好まれるなど、様々な味を受け入れる土壌が京都にはある」とみている。
生地から麺を切り出す「切刃」は1種類で10万~20万円する。だが「限られた中から選んでもらうのではなく、『ジャストワン』な麺で自慢の一杯を出してほしい」とオーダーメイドにこだわってきた。 人気商品の一つで、2013年に開発した「ウイング麺」は凹凸のある表面に具材やスープがよく絡むと好評だ。多種多様な麺は、ラーメン店主やファンの口コミで注目されるようになった。 納品する店は45都道府県に広がり、ラーメンを扱う焼き鳥店やカフェを含む1000店舗以上に及ぶ。京都で培った力を生かし、「海外市場も見据え、『本物の麺』を売り込みたい」と意気込む。
もっとも日本食ブームや訪日客の増加で、ラーメンの海外人気はすでに高い。 京都市左京区の北白川発祥で、市内で13店舗、首都圏に70店舗以上を展開する「魁力屋」は昨年11月、台湾で子会社を設立。今年は台北で海外1号店を出す予定だ。
現地では豚骨ラーメンの人気が先行するが、広報担当の永沢奈穂実さんは「京都のブランド力も手伝って、鶏ガラしょうゆの良さも知ってもらえるはず」と期待する。同社は今後、海外店舗向けに商品開発を進め、アジアや米国を視野に出店の可能性を探る。 古都に根付き、進化を続ける京都ラーメン。その勢いはとどまるところを知らない。(東大貴)